騎士道恋愛物語
🕑 Added 2020-04-07 08:17:55 +0000 UTC
「あーっ、今日は酒が旨いぜっ」
先ほど陽が落ちたばかりの城下町の酒場は賑わっていた。
「それ毎日言ってるじゃないですか」
「毎日じゃねえだろ。演習で野営してる時なんかは、酒なんぞありつけねえんだから」
「はぁ…」
そう言ってグビグビとジョッキを空にしていくのは、この国の騎士団の副団長を務めるノンバード。33歳という若さで、首都の騎士団のNo2にまで登り詰めたのは、コネでも血縁でもなく、一重に彼の実力が全てだ。今日の任務も訓練も終わり、オフモードに入ったノンバードの軽装の鎧は、彼の逞しい上腕を露わにしていたし、太腿に至っては皮の鎧がはちきれそうな程である。胸板も防具を押し上げ程で、彼が有数の武人であることは誰が見ても容易であった。
「あら、もう空にしちゃったのね。おかわりいる?」
酒場のウエイトレスの娘がノンバードが飲み干したジョッキに気付いて気を利かせる。
「おお、悪いな」
そう言って空のジョッキを彼女に渡すノンバード。その仕草を先週から入ったばかりの新人ウエイトレスがバーカウンターの中からポーっと見つめていた。
「悪いけど、あんまりあの人に期待しちゃダメよ?」
空のジョッキを受けとってカウンターに戻ってきたウエイトレスが新人に小さく囁く。
「あっ…すみません。仕事中なのに…」
「ううん、それは別にいいの。いや、よくはないわね。マスターに怒られるわ。今のナシ、ね?でも、ノンバードさんはね、女性からの視線にうるさいのよ。アタシが担当みたいになってるのも、アタシが既婚者で彼をそういう目で見ないって、彼も周りも分かってるからなの」
「…どういうことですか?」
「彼は男色家なんだって。本人も隠してないみたいだから言っちゃうけど。でも単に男の人が好きってだけじゃなく、女性から性的に見られることも苦手みたいなの。だからアタシとか、女将さんが彼の給仕係みたいになっちゃってさ」
「男色家…」
「あなた、田舎から出てきたから珍しいかもね。でもこの街は少なくないのよ。単純に人間が多いってのもあるけど、故郷にいづらくて出てくる人もいるみたいだから。まあ、男色だろうが何色だろうが、彼はザルだからね。ジャブジャブ呑んでくれるからイイお客さんなの。おまけに騎士団副団長様だからね。後輩とかいっぱい連れてきてくれるのよ。今彼の横にいるのは小隊長のジャルドゥさん。あの人もイイお客さんだから覚えてね。ジャブジャブ飲まないけど、すごく紳士だし、店で揉め事とか起きたら真先に助けてくれるから。」
そう言ってウエイトレスは笑いながらビール樽へと歩いて行った。新人は少しがっかりした気持ちになりながらも、気を取り直して出来た料理を運んで行く。酒場は今日も忙しい。
「あー、たらふく食ったし呑んだ。よし、帰るか!」
「ありがとうございまーす。また来てちょうだいね。」
普通の客の5倍は飲むノンバードは、普通の客の5倍の料金を渡してジャルドゥと共に颯爽と店を出て行った。積み重なった銀貨を目の前にウエイトレスも笑顔で送りだす。いつもの日常だ。
そしてこの後起こることも、いつもの日常であることをジャルドゥは予感していたし、期待で体を火照らせていた。
酒場のある通りはまだ明かりの漏れる窓に照らされていたが、路地を曲がれば月明かりが頼りになる。この区画は主に騎士団や、役人たちの居住区となっているので、治安が悪いということもないし、万一治安が悪かったとしても、ノンバードの顔を見て喧嘩を売るようなバカはこの街にはいない。
「明日はお前も休みだったか」
「はい」
「うっしっ!じゃあ、いいな?」
逞しいノンバードの腕がジャルドゥの腰にまわされて引き寄せられる。ノンバードは鍛えられた体を身長170cmくらいの体に詰め込んでいる。反対にジャルドゥは180cmと長身な体をしなやかな筋肉で覆った優男風の好青年である。ここだけ見てたら何も知らない者なら、筋肉ダルマによる優男への強姦でも始まるのかと疑ってしまうだろう。
「っ!まだノンバード様の家まで距離があります…」
「距離がなけりゃいいのか?ぁあっ?」
腰を抱いた腕の先の掌がジャルドゥの股間を揉みしだく。
「なんか硬ぇぞ?」
ニヤニヤ笑いながらジャルドゥを見上げるノンバードの目を見ないようにしながら
「っとにかく、まずは家に着いてから…」
と口籠るのがジャルドゥの精一杯であった。
「これ、つけてみろよ」
「?何ですかそれ」
ノンバードの家に着くや否や、いつものように玄関で荒っぽいキス責めをされて、口先では抵抗しつつも自ら服を脱ぎ捨てて、そのまま寝台へと転がり込む想定をしていたジャルドゥは拍子抜けしていた。
「この前の任務で見つけたんだけどよ。呪われた装備らしい」
「嫌ですよ。なんでそんなものを」
「コックリングだぜ?大昔の。付けられた奴は、これを付けた人の許可があるまでイけないんだとよ」
「…」
「最近俺ら、マンネリしてただろ?ちょっとしたアクセントになるかなー?なんて思って、拝借してきたんだ」
「ノンバード様…」
「まあ、嫌だっていうなら無理強いはしねえよ」
ニヤニヤ悪い顔で笑うノンバードを見て、ジャルドゥはゴソゴソと下着を外して半勃ちのペニスを露わにした。亀頭は剥けきっており決して小さくはないイチモツだった。幹の部分はコブのように血管が隆起しており、女を犯したら間違いなく種付て孕ませることができる代物だろう。精悍な優男のような顔立ちを歪ませて、鍛えられた肉体も無防備に晒し、上官へと媚を得る姿は部下に見られたらおしまいだ。だがそんな姿を躊躇なく晒せるくらいにジャルドゥはノンバードに調教されていた。
「ノンバード様のものに…してください…」
顔を赤らめながら懇願するジャルドゥを見て、ノンバードは足でジャルドゥのペニスを突っつきまわす。
「なんだこれ?なんでもう勃起してんだよ?」
「ノンバード様のものになりたいからです…」
「俺のものになれるからチンポがデカくなるのか?お前はつくづく変わってるな?」
「私をこんなふうに変えたのは…ノンバード様です」
「お前いい顔してんのにな。貴族の令嬢からの見合い話も断ってるらしいじゃねえか。まあ俺とばっかりいるから、俺の女だって、そろそろ社交界にも広まってそうだけどな」
「私にはノンバード様しかおりません…」
「だーかーらー、なんでそこでチンピクさせるかねえ、この騎士君は。あー面白え」
ノンバードの言葉責めを受けながらジャルドゥは益々興奮していく。
「軍隊なんて、女がいねえから代わりに男で性処理するみたいなもんだったのに。お前は訓練校を出てシャバに出ても俺にくっついてきやがるから、可愛くて手放せなくなっちまった」
「…だって、ノンバード様が…」
「ん?俺がなんだって?」
「…」
「言え。上官命令だ」
それを聞いたジャルドゥのペニスはビクンっと大きく脈打った。そのまま足を肩幅に広げて両手を腰の後ろで組むと、もう最大級に勃起した天を衝くペニスを隠しもせずに、訓練兵のような格好でジャルドゥは答えた。
「私、小隊長ジャルドゥは、ノンバード様からのフェラチオの命令を受けた入隊直後の洗礼の日から男色に目覚め、やがて自身の尻穴を弄る自慰にふけるようになりましたっ!それを見た同期の兵士たちに輪姦されていたところをノンバード様に救われて以来、ノンバード様への忠誠と敬愛が私の全てであります。したがって、ノンバード様の所有物になれるという状況が至上の悦びとなり、ノンバード様の一挙一動で興奮し、勃起し、射精に至り、そして益々忠誠を深め、お側にいたいという気持ちを受け入れていただけたような気がする為、ノンバード様の所有物になれる呪いの装備を付けられることが感極まるほど、私の身も心もノンバード様に染め上げられているからでありますっ!」
「ヒューっ、壮大な告白ありがとよ」
「Yes、sir!」
「じゃあ次の命令な。目つぶれ、お前。そしてそのまま動くんじゃねえぞ」
「Yes、sir!」
ジャルドゥは全裸の兵士の姿のままでノンバードの命令に従った。目を瞑る理由など問いただしてはいけない。兵士とは何も考えずに上官の命令を聞くものだと10年以上の軍人生活でジャルドゥの身に染みていたし、ましてやそれが決して誰にも言うことはできないが、己の所属する騎士団の真の主君である王よりも敬愛しているノンバードの命令とあっては、拒否するなどという選択肢はジャルドゥの中に全くないのである。
目を瞑ると他の感覚が研ぎ澄まされる。これは普通の人間にとっても同じかもしれないが、軍人という職業柄か、暗闇の洞窟などで行軍訓練を行うことも多いためか、ジャルドゥの感覚は更に研ぎ澄まされていた。上官ノンバードの立てたガチャリという軽い金属音は、彼の軽鎧を解く為の留め具の音だ。そして衣擦れと、床に布や金属が落ちる音。少し激しさを感じる上官の息遣い。理由はわからない。でも多分ノンバードは今自分の目の前で服を脱いでいる。音の気配から察するに、下も。だとすると今の彼は褌一枚だろうか。いや、その褌にも彼は多分手をかけている。布と布の擦れる音がする。結び目をほどくために揉みくちゃにしているような、そんな音だ。数秒間その音が聞こえたと思うと、流れるように布が落ちた音がした。多分ノンバードは今全裸だ。
「てめぇ、目開けてねえだろうな?」
「もちろんですっ!sir!」
「なんでじゃあチンポがピクピクしてんだか…まいいや。右手出せ広げろ」
「Yes、sir!」
何故?という考えが頭に過ぎったが、今は上官命令で目を閉じろと言われているし、命令には頭で考えるよりも体が先に動くようになった。
ジャルドゥ自身は下半身だけ素っ裸のままで勃起させっぱなしのペニスの先端からは我慢汁がタラタラと流れていることだろう。そんな情けない姿もノンバードに見てもらえると言うだけで嬉しくて仕方がないのだが、そんな興奮は真顔の仮面の下に隠して、命令通りに右手を出して広げた。その上にヒヤリと冷たい金属の感触がある。
「それを持て。そうだ。指輪を人にはめてやるみたいな感じでな。」
「Yes、sir!」
言われた通りに手の中に乗せられた金属を持ち直す。指輪にしては直径が大きい。これはもしや先程見せられた…
「ノ、ノンバード様…」
「誰が口を開けると言った。上官命令だ。黙れ。」
「…。」
何をするつもりなのかわからないが、黙れと命令されてしまってはもはや返事もできない。ジャルドゥは金属の輪っかを、まるで指輪を交換する新郎のように持って立ち尽くした。ぺたぺたと足音がする。ノンバードが近づいてくる。次の瞬間、手の中の輪っかに何かが触れた。そしてそのままソレは輪をくぐって突き進んでくる。そしていきなり抱き締められる。その勢いですっぽりと輪っかの中に何かは入ってしまった。なんということだ。多分ジャルドゥは自分の手でノンバードに呪いの装具を嵌めてしまった。
「よし。いいぞ。喋っても。ああ、目も開けていい。」
「ノンバード様っ!!」
急いで目を開けると果たして予想通りの光景が広がっていた。全裸のノンバードは惚れ惚れするような肉体を見せびらかし、その股間も地面と水平になる角度で勃起しており、そこには先程「呪いの装具」と言っていた金属の輪が根本まで嵌められていた。
「なんてことを!」
急いで外そうとするが、呪いの装備は当然ながら外れない。」
「アホか。呪われてるんだ。付けた奴の許可を得て射精するまで取れねえよ」
「っじゃあ!射精してください!今すぐ!」
「やなこった」
「ノンバード様!」
「あのさぁ、お前ちょっとは考えろよ。何のために俺がこんな舞台用意してやったと思ってるんだよ?」
「…えっ?」
「俺はな、命令を聞くだけの人形みたいな奴とセックスするのももう飽きたんだよ。なのにお前は家でも俺を上官扱いして、さっきみたいに兵士面してばっかりだ。だからな、俺がお前を男にしてやる。」
「…おっしゃてる意味が」
「お前、ケツは処女じゃねえけど、チンポ童貞なんだって?知らなかったよ。てっきり一度くらいは使ってんだと思ってた」
「…私にはノンバード様がいらっしゃったので、そんな必要は…」
「アホか。男に生まれて、ぶら下げるものぶら下げてるんだ。使わねえで真の男になれるかよ。」
「…そうおっしゃられましても」
「オラっ、俺のケツで卒業しろ。」
「えっ?」
「俺のケツをマンコにして、お前の童貞を捨てろって言ったんだよ。」
「っで、ですがそんなことは…」
「ごちゃごちゃうるせえなぁ…おい、上官命令だ。その勃起したチンポを俺のケツに入れろ」
「…。」
「命令だ。」
「…Yes、sir」
ジャルドゥは気が乗らないような風体でゆっくりとノンバードを抱きしめた。しかしその股間のイチモツは硬く天をついているのだった。
寝台に寝転がったノンバードが、脚をM字に開いてこちらを見ている。正直それだけで射精しそうになるジャルドゥだったが、上官命令である脱童貞を成し遂げずにそんな醜態を晒すことはできないと気を引き締めた。
「慣らす必要なんざねぇ。俺も入隊した頃にケツは何度も掘られてるんだ。今朝自分で広げておいた。お前はやりたいようにやれ。そして俺のケツの中で射精するんだ。いいな?」
「はい…」
「上官命令への返事はそうじゃないだろ?」
「Yes、sir…」
ノンバードの言葉通り、指で軽く触れたそこは既に軽くほぐれていた。今まで他人のアナルを触れたこともないし、女性を抱いたこともないジャルドゥは、それが自然なことなのかどうかはわからなかったが、上官命令に従ってペニスを挿入しようと、自身のイチモツに手を添えて先端でノンバードのアナルに触れる。
軍隊に入隊してすぐに衛生観点から全ての軍人は包茎手術を受けるので、当然ジャルドゥの亀頭も剥き出しである。粘膜と粘膜の接触は、想像よりもずっと熱く、今すぐにでも射精してしまいそうになる。もう10年近くノンバードのペニスを胎内に受け入れ続けてきたジャルドゥだったが、まさか逆の立場を経験する日が来るなんて思ってもいなかったし、それがこんなにも興奮するものであるだなんて予想だにしていなかった。とにかく早く挿入しなければ。今にも放出しそうにパンパンに腫れ上がった自身のペニス、上官命令である中での射精ができなくなってしまう。窪みに亀頭の先端を乗せて、ズレないように手を添えてジャルドゥは思い切って腰を押し込んだ。
「くはっ…」
ノンバードの声から苦悶とも取れる吐息が溢れる。
「申し訳ありませんっ、痛かった、っあ、っあ、熱いっ!!」
挿入して亀頭の最も太いところがノンバードのアナルを潜り抜けた瞬間、ジャルドゥは精を放った。
「ぐはっ!」
頭ではマズイと分かっていたが、胎内での射精を命じた上官命令への忠誠心と、ジャルドゥの雄としての本能、より奥深くで射精しようという脳信号が相まって、体が勝手にノンバードの尻に腰を打ち付けた。ノンバードの声は明らかに苦痛の色が大きいものになっていたが、ジャルドゥはそれどころではなく、強大すぎた快感への惚け、1秒も保たなかったのではないかという男としての情けなさ、そして上官であり敬愛するノンバードを労ることもできずに身勝手に本能が腰を押し込んだ罪悪感。一度に訪れる情報と感情の濁流に流されて、ジャルドゥは肩で息を整えながら黙り込んだ。しかし一つだけ間違いないのは、この射精は精通の時をも上回る今までで一番強い快感を伴う射精だと思った。
「まーだいじけてんのか?」
「そうではありませんっ!」
「じゃあなんでコッチを見ねえんだよ?俺の中、あんまり良くなかったか?こっちも人に挿入されるのは15年ぶりくらいだからな。悪かったよ」
「っち、違いますっ!むしろ良すぎて…なにもわからないまま終わってしまいましたし…その、ノンバード様のお身体の負担も考えず…」
「アホか?俺は軍人だぞ?こんくらいのことで凹むわけあるかっ」
「そうではなく…自分で自分が許せないのです。ノンバード様に頼りっ放しで、まして童貞を捨てさせていただくなど名誉なことを…でも、それも私が今日まで自分から行動しなかったから。見かねたノンバード様に気を使わせて…」
そこまで言って黙り込んだジャルドゥ。全裸のままで所在なさげにノンバードの寝台の隅に腰掛けている。枕元にいたノンバードは体をずらして近づいて、その落ち込んだ頭をグシャグシャと撫でた。
「ジャルドゥ、お前いくつになった?」
「27になります」
「だな。今日で28だろ?」
「えっ?」
ノンバードの言葉に驚いて、壁の時計を見ると日付が変わったばかりで、ジャルドゥの誕生日になっていた。
「すっかり忘れておりました…」
「そんなこったろうと思ったぜ。」
「貴族の妾の子供に過ぎない私は、誕生日など祝ってもらった経験はほとんどありません。ノンバード様が毎年覚えていてくださることに驚いております。自分でも忘れてるのに」
そう言ってクスクス笑うジャルドゥの頭をノンバードは撫で続ける。
「お前はよぉ。顔もいいし、真面目で、イイ男だ。騎士団に入ってきた時に驚いたよ。お前なら俳優にでもなれそうな顔立ちだし、勉学も優秀だったという。なのに進学もせずに15でいきなり入隊しやがった。妾腹とはいえ、貴族の子供なら大学校を出て士官候補生として入ってくるのが大半なのにな。まあ事情があるんだろうってことだけは分かった。しかし軍隊にお前みたいな美青年が入ってきちまうと、いろんな意味で風紀が乱れるんだ。身をもって知ってると思うけどな。」
「はい…私が先輩兵士に強姦未遂された件ですね」
「ああ。あの時お前を見つけれてよかったよ。20歳でまだ小隊の副隊長程度の位しかなかった俺だったが、一眼見たときからお前に惚れてたんだろうな。食堂にお前がいないことにすぐ気づいた。遅刻なんて絶対にしないはずなのに」
「えっ…?」
「俺がどんな気持ちでお前を探したと思う?やっと見つけた時には裸にひん剥かれて泣きそうになりながらブチ犯される直前だ」
「確かその時でしたね。ノンバード様がドアを蹴破って助けに来て下さったのは」
「頭に血が登ってな。まあ、風紀違反を起こしたあのアホ共は追放できたし、お前の可愛いバージンも守れたから、ドアを壊した始末書なんて些細なものだったよ」
「普段、書類仕事は苦手と仰ってるのに」
「お前はまだわかんねえかなぁ」
「?」
「俺はお前が好きなんだ。」
「!」
「だから10年以上手放さなかった。童貞なんて捨てさせるわけない。俺が目を光らせてお前に近寄るものを遠ざけてたんだからな。」
「ノンバード様…」
「怒っていいんだぞ。俺はお前から色んなものを奪ったんだ。俺自身のことを正当化する為にな。俺は男しか欲情しねえ。軍隊にゃ、そんな奴も多いと聞くが、実際は女がいれば女の方がいいってやつが大半だ。だから時間をかけてお前には俺しかいないように思わせたかったんだ」
「…」
「今日だって。めちゃくちゃな理由をつけて、命令ってことにすれば、お前は俺で童貞を捨てると分かってた。お前への誕生日プレゼントなんて勝手に思っていたが、また俺が奪ったんだ。」
「…」
「もう終わりにしよう。お前は自由だ。俺は所属先が変わる。騎士団構成員なのは変わらねえが、全種族が集まる中央都市の方に行くことになった。明後日にはこの街を経つ。中央都市は同性婚もできるからな。お前にプロポーズして、連れて行くつもりだった。でも考えた。お前はきっと俺について来ようとする。だから俺たちは離れなきゃダメだ。俺のせめてもの操というか、義理だてのつもりで呪具をつけさせたんだ。俺はお前に犯した罪を忘れない。でもお前は俺を忘れていいんだぞ。」
「ノンバード様…」
「最後の上官命令だ。ジャルドゥ、寄宿舎に帰れ。そして俺を忘れて、幸せになれ。」
「嫌です」
「よし。それじゃ、あん?」
「嫌だって言ったんだよ」
「おい」
「ノンバード様は俺を10年拘束したと仰いましたね?」
「いや、あの命令」
「うるさいな。俺の質問に答えろ」
「えっ?」
「えっ?じゃねえよ」
「あ、うん。10年。そうだな。俺が20の時でお前が15で、俺は今33でお前は28…正確には13年だ、な…」
「…ばーか」
「なっ…」
「やっぱガキの頃のあだ名通りじゃん。バード兄ちゃん。鳥頭って言われてたけど、本当だよ。」
「へっ?」
「13年じゃないよ。俺はあんたを追って16年も掴み続けてたんだ。」
「はっ?」
貴族の子供ということで、エリート学校に通わさせられた。でも所詮は妾腹の子供。本妻の子供もいる学校に居場所などなく、学校に行くフリでいつも近くの森で時間を潰していた。学校側も俺のことには触れたくなかったようだし、夜には家に帰っていたから、あのサボりは誰も知らないかもしれない。
12歳の時だった。いつものように適当に見繕った本を読んで木陰で過ごし、自分の本来の学年よりもはるかに上級な問題集をスラスラと解いて、少し疲れて寝転がっていた。
するとその顔を覗き込んできた、顔があった。
「行き倒れか?」
「びっくりした…」
「それはこっちのセリフだ。ガキが学校も行かねえで、こんな昼間に何してるんだよ」
「そっちもガキだろ。俺と背丈かわんなさそう」
「なわけあるか。俺は17だ。15から軍隊に入った軍人さんだぞ?」
「軍人さんがなんでこんなところにいるの?暇なの?」
「ちょっと大人の事情があるんだよ」
「おいノンバード。いつまで逃げてるんだ?体だけ動かしてればいいわけじゃないぞ!」
「やっべ!」
「ノンバードってあんたの名前?」
「うるせえ黙ってろ」
そう言って17歳の軍人さんは俺を抱えて軽々時に登り、葉っぱの中に隠れた。
「全く…あいつは何処に行ったんだ…剣の腕だけ買われて15歳にして入隊なんて名誉なことなのに、頭の方がてんでダメときてやがる…書類仕事だって覚えなきゃいけねえことはあるんだ。帰ってきたら締めてやる…」
そう言って大人の軍人さんが俺たちの下を通り過ぎて行った。
「ノンバード、もういいんじゃない?降ろしてよ」
「お前なにさらっと呼び捨てしてんだ。ノンバードさんだろ」
そう言いながらスルスルと木を降りて元の場所に帰ってきた。
「じゃあバード兄ちゃん」
「やめろ。鳥頭ってガキの頃から馬鹿にされてるんだ」
「じゃあノンバードでいいじゃん。長いもん」
「…まあいい。とっとと学校行けよ?」
「うるさいな…こっちにも事情があるの」
「ははーん?お前さてはサボってばっかで勉強ついていけねえんだろ?」
「どうだろ。これくらいならできるけど」
「…なあこれなんて読むんだ?」
「ニジカンスウ」
「虹感数?」
「たぶん違ってるけど、それでいいよ、もう」
「ふっ、ふーん。まあまあやるみたいじゃねえか。」
「そりゃありがと」
「じゃあなんで尚更行かねえんだよ」
「妾腹だから」
「あっ?」
「貴族の妾腹で、体裁のために帝立学校に行ってたけど、空気みたいに扱われるし、嫌気がさしてたから」
「なんだそりゃ…っふざっけんなよ!」
「俺に怒んないでよ。」
「誰がテメエに怒ってるって言った!俺はお前みたいな子供が、妾腹だの、体裁だのって言葉を使わなきゃいけないような状況を生み出してる周りの大人に怒ってるんだっ!」
「そんなこと怒っても誰も得しないよ。よしなよ」
「うるせえ。とにかくそんなクソみてえな場所なら行く必要はねぇ。代わりに俺が週に一度だけ体育の授業をやってやるっ!」
「なにそれ、いらないよ」
「体育はいいぞ?ムカつくやつを体術で交わして、腕の一本くらい折っても正当防衛を主張できるからな」
「なにそれ、やりたい」
「おしっ!じゃあ毎週水曜のこの時間にここでな!」
冷めた子供だったと自分でも思うけど、生まれて初めて「ワクワク」という気持ちになった瞬間だったと思う。そしてこれがたぶん俺の初恋だ。もっと嬉しかったのが、バード兄ちゃんがその後も約束を守って、体育の授業をしてくれたこと。でも別れはやってきてしまった。
「なあ、この授業。悪いけど今日で最後だ…」
「…なんで?」
「赴任が変わる。地方に行かなきゃいけねえ」
「左遷?」
「ちげえ。嫌なこと言うな」
「じゃあ栄転?」
「まあ、な。くらいが一つ上がる」
「へー。よかったじゃんおめでとう。先週言ってくれたらプレゼントでも用意したのに」
「お前なあ…もうちょっと残念がれよ」
「残念がったって、仕方ないじゃん」
「最後まで可愛くないガキだ…」
「なにも用意してないや。あっ!そうだ」
「あん?」
「これあげるよ」
そして俺は間髪入れずにバード兄ちゃんの頬にキスをした。
「なっ!?」
「僕のファーストキス。餞別だと思って」
「ばかっ!こういうのは大事な人の為に取っておくんだぞっ!」
「大事な人の為に取っておいたから今渡したんじゃん」
「なっ、お前っ」
「子供の純心、あげたんだから一旗あげて帰ってきてよ」
「…わかったよ」
「じゃあ、元気でね。ノンバード兄さん」
「お前初めてフルネームで敬称つけてくれたな」
そう言って笑いながらノンバードが去って行くのを笑顔で見ていた。俺の名前は教えなかった。家柄について言及してはいけないと気を遣ったのかノンバード兄さんから聞かれることもなかったし。
「マジか…」
「マジだよ。バード兄ちゃん」
「ジャルドゥ…いや、なんかそんな気はしてたんだよな…」
「忘れてたのかと思った」
「忘れるわけねえだろ。12歳のガキにファーストキスの餞別貰ったんだぞ?」
「だってなにも言わないし」
「俺もお前がなにも言わないからって思ってたよ。貴族の妾の子供なんて、あの頃はよく知らなかったけど、騎士団には多いからな。訳ありで家に帰りづらい奴とか。深入りして聞くわけにもいかなかった。」
「まあおかげで、完動的な再会になったね」
「…」
「そんな顔で見ないでよ」
「おい、上官命令だ」
「?」
「寝ぼけた顔してんじゃねえ。答えろ、命令だ」
「…Yes、sir」
「中央都市への赴任は伴侶を連れて行ける。お前、騎士団辞めて俺の伴侶になってついてくる気はあるか?」
「…」
「嫌なら断れ。どちらか選べという命令だ」
「…もちろんOKです。sir」
そう言って首元に抱きついてやったら
「よっしゃぁあああああっっ!!」
馬鹿でかい声で雄叫びをあげられて耳がおかしくなるかと思った。
抱きしめて下を見ると、例の呪いのコックリングがバード兄ちゃんのチンポの根本にしっかりハマっていたのだけど、後でおもしろいことになりそうだから今はなにも言わないでおくことにした。