洗脳バリカン【全編】
🕑 Added 2018-05-14 11:37:45 +0000 UTC
「なんか、坊主の奴増えたんじゃね?」
気がつけばクラスの¼の学生が涼しげな坊主頭になっていた。
「そういやそうだな。まあ、これから暑くなるし。」
「まあそうだけど、だってあいつ先週までめっちゃ気合い入れてセットしてた髪で、美容室で芸能人の誰だかと同じにしてもらったとか言ってたのに。なんで急に坊主?」
「あいつに聞けよ。俺が知るわけないだろ。」
「だよな。」
物理教室で俺は前の席の角谷と話していた。真面目が服を着て歩いているような印象を受ける黒縁メガネに坊ちゃん刈りのような頭。うん、こいつが坊主になった日にはお笑いものだな。
しかし昭和の時代でもあるまいし、大半が坊主頭で揃えられた教室というのもなんだか違和感のある光景であった。
「おいお前ら席つけー。」
ドアを開けながら気だるそうに入ってきた理科教師の坪田。最後のコマの授業ともなると教師もだるく思うのだろうか?そんなら休みにしちゃえばいいのにな。
190近い長身と、その割に細っこい体で、密かに「棒切れ」と生徒の間で呼ばれている可哀想な男。気さくな兄貴と言ったキャラで、決して嫌われてるわけでも、馬鹿にされてるわけでもなく、むしろ慕われている部類に入るだろうに。単に容姿だけでそんな乱暴なあだ名が知らぬところでついているのだから、高校生とは残酷な生き物である。
「なんだ、飯島?なんかあるのか?」
そんなことを思いながら顔をマジマジと見ていると目があってしまった。
「いや、なんでもないっす。」
「なんだよ。気になるな。まあいいや、教科書開けー。」
なんだかよくわからない電気信号がどうだとか物理の難しい話が棒切れの口からスラスラと出てくる。
へー、そうですか。と言った具合に俺は早々に理解することを放棄して、右から左へ聞き流していた。テスト前に角谷にノート写させて貰えば問題ない。この前こいつの部屋に行った時に机の引き出しからコンドームを見つけたから、彼女ができたのかと問い詰めたらオナニー用に買ってるのだと白状した。それを角谷の母ちゃんにバラしてやろうとしたら、凄まじい勢いで慌てていたから頼めばノートくらい貸してくれるだろう。うん、俺はいい友達を持ったもんだ。
そんなことを考えていくうちに俺の頭は夢の中へと転げ落ちて行った。
「あほか。」
「うるせえ。」
俺は今、馬鹿みたいに重たい変な機材を運んでいる。並んで歩く角谷は紙袋一つだけ。
「お前も起こしてくれりゃいいじゃんか。」
「俺は真面目に黒板見てんの。お前が寝てることも気づきませんでしたぁ。」
「だとしても酷えよ、棒切れの野郎。生徒にこんな変なもの運ばせやがって…。」
「なんか実験装置とか言ってたな。落としたら何十万とか弁償だぜ?きっと。」
「嘘…。」
「いや、知らねえけど。」
「変なこと言うなよ!」
授業中に爆睡していた俺はチャイムの音で目が覚めた。すると目の前には棒切れが笑顔で腕組みして立っていた。
「よく寝てたなぁ。育ち盛りはちゃんと寝ないとダメだぞ?よく寝た後は運動して筋肉つけような。」
笑っていない目でそう告げられて、俺は観念した。
さすがにそこは友人の情けか、角谷が手伝いを申し出てくれたが
「んー、じゃあ角谷はこれ持って行って。物理準備室に。1番奥の棚の下の方に置いてくれればいいから。」
と軽そうな紙袋を一つ渡されただけ。
「いや、あの機械みたいなやつを2人で運んだ方がいいんじゃないですか?」
と俺が言うと
「悪いな、飯島。あれは1人用の機械なんだよ。」
とどこぞのお金持ちのボンボンみたいなことを言い出したが、その目はやはり笑ってなかったので、俺は1人でこの変な機械を抱える羽目になった。
「「失礼しまーす。」」
やっとこさ物理準備室に辿り着いてみると、校舎の端っこの日当たりの悪いその部屋はどこか不気味に見えた。
物理教師は昨年定年退職したおじいちゃんなき今、坪田だけになっていたので、その坪田がいない状態では人気など全くない。
しかしなぜだろう。さっきまで坪田は俺たちに授業をしていたから、この部屋はずっと誰もいないはずなのに、なんだか人の気配が残っているような気がした。
なのに俺たちがドアを開けた瞬間に全員が消えてしまったような…
思わずブルっと身を震わせると、角谷も同じことを感じたのか
「ここ暗いな…早く適当に置いて戻ろうぜ。」と言いズンズンと中に入って行った。
「待てよ!」
「なんだよ?」
「いや…先生来るの待ってた方がよくね?」
「そんなの待ってたらいつになるかわかんねえじゃん。」
「そうだけどさ…なんか…。」
「なんだよ、俺塾あるから早く帰りてえんだよ!」
「ピリピリすんなって。」
「してねえ!俺はさっさとこれ奥の棚に置いて帰るからな。」
そう言って角谷は暗闇の中に消えていった。
まだ夕陽が差し込んで校舎内は赤く明るかったのに、この部屋は位置が悪いのだろうか?なぜだか奥が真っ暗で何も見えない。電気の位置もわからない。
「待てって、電気くらいつけようぜ?」
「…。」
「角谷?」
「…。」
「おい、いるんだろ?」
「…。」
「おーい、角谷くん?」
「机の引き出しの2番目の奥にネットで買ったコンドーム隠してる角谷くーん?」
「なあ、フザケンナって。マジ。」
「なあ…?」
「5秒数えるまで返事なかったら俺帰っちゃうよー?」
「5、4、3、2、1…。」
角谷の返事はなかった。
そこから俺は持ってた機械をその辺に放り投げて職員室へと全力疾走した。
「角谷がいない?」
「マジでゴムのこと言っても怒らねえし、マジっす。マジで消えたんっすよ!」
「なんだよゴムのことって。先に帰ったんじゃねえの?」
「いやいや、入り口に俺立ってたんっすよ?出てきたらわかるでしょ?」
「…たしかに。あそこは窓も小さいし、開かないからな。」
「坪田先生も一緒に見に来てくださいよ!」
「わかったよ。仕方ないな。」
「おーい、角谷!先生来たぞ!もう帰ろうぜ!」
「おい。角谷。飯島も心配してるぞ?本当にいないのか?」
「…。」
「いないんじゃないか?」
「いや、いますって。間違いなく入りましたもん。」
「お前が職員室来るまでに出て来たとか。」
「それは…あるかもだけど…そうだっ!携帯!」
俺は角谷の携帯に電話をかけた。いつもポケットに携帯を入れているあいつのことだ。いたら音がするはずだ。
ヴーッ、ヴーッ、ヴーッ…
部屋の奥の不自然な暗闇から携帯のバイブレーションが聞こえて来る。
坪田と目を合わせると、なにやら異常が起きたことを気づいたようだった。
「おい。角谷。携帯鳴ってるぞ。ふざけてないで出て来なさい。」
そう言うと暗がりに向けて坪田が歩き出した。
「先生!ダメっすよ。危ないです!」
「飯島、お前は来るな。おい、角」
「…先生?」
「…。」
「えっ、ちょっ、えっ?坪田先生?」
「…。」
俺は脇目も振らず準備室を飛び出し、学校を後にした。
その日のことはよく覚えていない。
俺はもしや2人の人間を見捨てて来てしまったのだろうか?と自分を責めては、いや、あれはどうしようもないし、何かがあったと決まったわけじゃない。
ただ、ガキの頃から付き合いのある角谷の家から電話が来るんじゃないかと、気が気ではなかった。
「帰ってこない。」
などと言われたらどうしようか。怖くて飯もろくに食えず、風呂にも入らないままで布団に入ったけど、結局一睡もできなかった。
それでも朝はやって来る。
極力何も考えないことにして、普段通りを装い学ランに袖を通し、カバンを背負って家を出た。
「よぉ。」
そこにはいつも通りの笑顔の角谷が立っていた。こいつは小学生の時から俺のことをこんな風に迎えに来る。
ただ、今まで10年近く一緒につるんで来たなかで、こいつが髪型を坊主にしてるのを見たのはこの日が初めてであった。
「えっ?」
「なんだよ、幽霊でも見たような顔して。」
「いや、えっ。」
「あっ、そういやお前昨日俺のこと置いて帰っただろ?ふざけんなよ。頼まれたってもうノート見せてやらねえからな。」
「いや、そんなことじゃなく…。」
「ま、いいや。行こうぜ。遅刻するだろ。」
「えっ、あっ、うん。いや、お前さ、その頭どうしたの?」
「は?…あぁ、これか。男は短髪だろ。一人前の男として、そろそろ俺もガキみてえな見た目じゃいられねえよ。」
「でもそんな急に…。」
「俺たちもう18だぜ?そろそろ男にならねえとダメだろ?」
「別に坊主じゃなくても男だろ…。」
「坊主じゃなきゃダメなんだよ。坊主以外じゃ軟派な野郎に見られちまうぜ?男なら坊主刈りだよ。やべえ、こんな話ししてたらチンポ勃起してきた。早く行こうざ。」
「っぉ、おぉ…。」
角谷の口からとんでもない言葉が次々と飛び出すので、俺はその展開についていけなくなり、全て聞かなかったことにした。
「筋肉ももっとつけねえとなあ。男なら逆三角形っつーの?ああいう体にならねえとな。」
歩きながら角谷がまだ何か言っていたが、何を言っているのか俺は理解できなかった。
学校に着くと校門のところで坪田が立っていた。当番制なのか、毎日誰か彼か先生が立っているのが日常だが、昨日の今日で、ましてや今朝角谷と会った時と同じ不気味さを俺は感じてしまった。
「おぅ、お前らおはよう。」
「おはよーっす。」
「坪田先生っ、おはようございますっ。」
坪田からの挨拶に角谷が背筋を伸ばし腹から声を出して答える。こんなことも今まではなかったのに。
「おい、飯島。お前昨日先に帰りやがったな?次の授業の時あててやるから予習しっかりしておけよ。」
そう言って一見朗らかに笑う坪田の頭も角谷同様に刈り上げられた坊主頭だった。
教室には確実に昨日より坊主頭の学生が増えていた。
耳を立ててそいつらの話を聞いていると
「俺今度応援団入ろうかと思ってさ。
「男らしくていいな!俺も入ろうかな。」
「俺昨日初めて筋トレしてみたよ。」
「いいじゃねえか。お前今まで勉強ばっかで他はサッパリだったもんな。男は力が全てだぜ。俺も一緒に鍛えるよ。」
「今朝夢精しちまったよ。精を漏らすなんて弛んでる証拠だよな。」
「なんだそれ。お前そんなんじゃせっかくの男の象徴が泣くぞ?男根も常に鍛えておくべしって言われただろ?」
「わかってるよ…あっ、でももう女なんかで抜かなくなったぜ。」
「おお、それはやるじゃねえか!男たるもの、真の愛を探して男同士で契り合わねえと、男にはなれねえからな。」
「ああ。早く俺も一人前の男になりてえよ。」
なにがなんだかわけがわからない会話が教室中を飛び交っていた。
話しているのは全員坊主頭の生徒たちばかり。いつもこの時間は俺と話していた角谷でさえ、俺のことなどほったらかして坊主組の中へ入っていき、この前までさほど親しくもなかった奴と肩を組みながら笑顔で話している。
俺以外のまだ坊主刈りになっていない生徒たちは全員教室を出て行ってしまった。聞いてるだけで嫌悪や恐怖が湧いて来たのだろう。
俺も角谷を一度チラリと見たものの、あいつが俺のことなど全く気にも留めないで男談議に花を咲かせているのがわかり、教室を後にしてトイレで時間を潰すことにした。
放課後、坪田以外にも何人か坊主刈りの教師がいることに今日の授業を受けながら気付いてしまい、ますます不気味さを感じていた。
俺以外の髪がまだある組の男たちも何かがおかしいと思ったのか、何度か休み時間に話をしようと試みたのだが、その度に坊主刈り集団から
「なぁ、お前らいつまでそんな女みたいな髪してんだよ?」
と割って入られてしまい、何も話すことはできなかった。
放課後の騒がしさの中、俺は物理準備室へと向かっていた。校舎の隅は徐々に人の気がなくなり、正直いうと俺の心は恐怖と、使命感で満たされていた。どんなに怖くても、そこに行かなければ角谷は帰ってこないような気がした。
だから俺は途中で目にした運動部の奴らが全員坊主頭になっていたことも、俺が物理準備室に向かうその背中にそいつらが粘ついたような視線を投げかけていたことにも全く気づかなかった。
「失礼します…。」
ガラガラと建て付けの悪い準備室のドアを開ける。やはりどの時間帯に来ても、どんなに廊下が明るくても、この部屋の奥には全く光が届かないらしい。
「…誰か…誰かいませんか?」
弱々しい俺の声が物の少ない部屋の中で若干反響している。
「角谷、本当はそこにいるんじゃないか?」
俺は震える声を必死で抑えて語り続けた。
「昨日は先に帰ってごめん。俺なんでもするよ。お前がいないなんて嫌だよ。なんか今日、お前の偽物みたいのが俺のウチまで朝迎えに来たんだぜ?そいつ、男がどうだの、チンポがどうだの、お前なら顔真っ赤にするようなことを平然と連呼しててさ。あんなの絶対お前じゃないよな。なんか、悪い奴に捕まったりしてるんだよな?角谷、助けに来たよ。なんか合図してくれたら俺そっち行くよ。」
俺の必死のメッセージは馬鹿みたいな内容だったが、心を込めたつもりだった。でももちろん、合図など帰ってはこなかった。部屋の奥の暗闇に俺の囁くような声は全て吸い込まれて丸飲みされてしまったかのようだった。
「そうだ、昨日角谷の携帯のバイブは間違いなくあっちから聞こえてたっけ…。」
それを思い出した俺は、少し震える指先でスマホのロックを解除すると、履歴からすぐに角谷の電話番号を呼び出した。
ヴーッ、ヴーッ、ヴーッ、
俺の真後ろから音がする。
え?と思うなもなく、白い布みたいなものが俺の口と鼻を覆い、俺の意識は落ちて行った。俺の顔をがっしりと掴む手のひらは、ガリ勉気質で俺がからかったペンダコがある角谷の手のひらに似ている気がした。
目がさめるとヒンヤリした部屋で俺は椅子に座らされていた。自発的に座ったわけではないことは何故か椅子の背もたれに縛られている縄のあとを感じてわかった。
「どこだ、ここ…?」
声を出すとエコーがかかる。吸う息がなんだかカビっぽいような、苔っぽい匂いがした。
「校舎の地下室だ。もっとも存在はほとんど知られていなかったようだが。」
聞き覚えがあるような声が響き、俺は身を硬くする。
「お前たちは本当に男気というものを忘れてしまったようだったからな。私が再教育してやろうと密かに此処に拠点を作っていたんだ。最初は知らずに近づいて来た奴らから教育してやったが、お前みたいに危機感を覚えながら立ち向かって来た生徒は初めてだ。教員ならば昨日の坪田もまあなかなかだったがな。普通であれば怖気付いて職員室にでも戻って人を呼んできただろうに。まあ、奴も棒切れなどと呼ばれながらもそこは男だったということだな。」
「その声…平岡先生?」
「ほぉ、声だけで私がわかったか。結構、結構。」
饒舌にハキハキと太い声で喋るのは、昨年定年退職したはずのもう1人いた物理教師の平岡であった。
「あの、言ってることがわかりません…。」
「授業の時から素直にわからないことは質問するように心がけておいた方がいいぞ。それにわからないとは、一体どこがわからないというんだ?」
「教育って、なんですか?男気がどうだとか…。」
「簡単なことだ。今のお前らは軟派過ぎるのだ。女遊びに興じて、男として生まれた資質を磨きもしない。快楽だけを追求し、困難を楽に対処する方法ばかり知りたがる。そんなことでは立派な男とは呼べない。ならば私が教育者として、せめて自分の教え子だったものたちには男気を教え込んでから学校を卒業させたいのだよ。」
「男気ってのが、なんていうか、よくわかんないです。それにそれを教え込むために俺をこんなところに連れて来て縛ってるんですか?」
「昔はこのくらいの体罰は当たり前だ。否、愛のある教育は体罰などでは決してない。私はお前にもまた、この男として生まれた素質を活かして生きぬいて欲しいだけだ。」
そういうと何か棒状のもので俺のチンポがツンツンと突かれた。
「っな!?」
今まで気がつかなかったが、俺は全裸で椅子に座らされていた。
「なんで、こんな!?お前ただの変態じゃ…。」
「飯島っ!いくらなんでも先生に無礼だぞっ!」
突如聞きなれた声が響く。
「角谷!?角谷お前そこにいるのか?」
「ああ、先生に言われたんだけど昨日俺たちを放って逃げたお前を今日は男にするために連れてくるようにってな。でもそしたらお前自分から準備室に来てくれたんだもんな。俺、嬉しかったぜ。あんなこと普段は言ってくれねえのによ。」
「うむ。わたしにも聞こえていたぞ。あれこそ美しい真の男同士でしか結べない友情だ。お前たちこそ契り合うに相応しい関係だと私は感じた。だから角谷にもお前を男にする瞬間に立ち会ってもらうべきだとも思ったからここに呼んだのだ。」
「なんのことだかわかんねえけど、じゃあもう俺の縄といてくれよ!角谷、一緒に帰ろうぜ!」
「ダメだ。お前はまだ男になっていないだろ?」
「何言ってんだよ。俺はどう見ても男だろ?」
「見た目の話じゃない。真の男になるために、その体についた邪なものは全て手放さなければならないんだ。少し乱暴なやり方だけど、俺も昨日平岡先生にしていただいて目が覚めたよ。今までの俺は甘ったれすぎていたんだってな。飯島っ、俺と男になろうぜ?俺、今日いろんな奴とも話したけど、やっぱ契りを交わすのはお前以外考えられねえ。」
「だから何言ってんだかわかんねえって!」
「グダグダといつまでもキリがない。平岡先生、よろしくお願い致しますっ!飯島も立派な男に変えてやってください。」
「良かろう。飯島、お前もこれで真の男だ。」
「何言って、ギャーッッッ!!??」
バッシーーンっと乾いた音が響き、俺の体に灼けるような痛みが走った。どうやら先程俺のチンポをつついたのは竹刀だったようで、今俺は平岡に竹刀で打たれたのだ。
「何しやが、あっ、あっ、あっっ、いだっ」
バシン、バシンと容赦なく俺の全身を縦横無尽に竹刀が打ち付ける。
最初は一打ごとに悲鳴をあげてしまっていたが、いつしか力なく唸ることしかできないほどに、渾身の力を込めて打たれ続けた。
「ううっ…。」
「女のような悲鳴がでなくなったな。もう充分男の魂は注がれたことだろう。」
「よかったなっ!飯岡っ!」
何がいいのかさっぱりわからない。
でもこれで帰れるのか。しかしそれならなんで角谷や坪田はこんな目に合って、次の日には爛々と目を輝かせ平岡の言う「男道」とやらにハマっていたのだろうか。こんなのただ痛いだけじゃないか。
「次で余分なものを全て落とす。つまり禊だな。これが済めばお前も真の男だ。」
平岡がそう言うと、ヴィーンっと無機質なモーター音が響いた。
そうだ、あいつらみんな坊主頭になってた。これで俺も坊主にされるんだ…そしたらあいつらみたいに男道に染まってしまうのだろうか?
いや、そんなのはおかしい。
竹刀で滅多打ちにされて、バリカンで強制的に頭を刈られたりした場合、恐怖で従うことはあるかもしれないが、今の角谷たちは心から平岡の言う男道を敬愛しているように見受けられる。だとしたら…まさかまだ何か重大なことが隠されているんじゃ…
「あっ、あっ、あっ、あ"っ、あ"っ、あ"ーっ!あ"ーっ!!??」
俺の思考はそこで止まった。
頭に押し付けられたバリカンから伝わるモーターが脳をかき回している。男とはなんたるべきか、男になるために必要なものとは何か
そのために契り合う意義と喜び。
生々しいほどの感覚が刈られたばかりの頭皮から、頭の中に浸透してくるようだ。
「あ"ーっ!あ"ーっ!!」
映画のゾンビのように叫び続ける俺を角谷は涙目で見ていた。
「飯島っ!お前なら耐えれる。頑張るんだ!」
その声を聞くだけで俺の中には角谷への愛しい気持ちが芽生えてくる。男同士で?そんな疑問はバリカンですぐさま刈り取られてしまい、何もおかしなことはないと肯定された。
「これで終わりだ。」
全ての髪が刈られた。
のたうちまわるうちに解けていた縄が肌にまとわりついているが、それを気にせず俺は立ち上がる。
「っか、角谷ぁ。」
俺のチンポは上を向いていた。
「飯島っ!」
そう答える角谷のチンポも上を向いていた。
2人ともそのまま駆け寄って互いの体を抱きしめ合う。
天に向かってそびえ立つ男根が互いの体に挟まれて密着した。
「いいぞ。まずは兜合わせからやってみろ。男同士の契りは互いに全力で、手加減などしないのが儀礼だ。」
「「はいっ!!」」
平岡先生に頂いた助言をもとに俺たちは互いの亀頭をしっかりとくっつけて扱きあった。
おかしなことなど何もない。これが男に生まれた者の生きる道なのだ。
「あぅっ、俺もうイくっ!」
「俺もっ、お前が男になるとこ見てるだけでイきそうだったんだっ!」
「2人とも、決して手は抜くなよ。そのまま力を緩めず扱き続けろ!そして同時に精を放つのだ!」
「「はいっ!!」」
平岡先生が俺たちの契りを見届けてくださる。俺たちは今、真の男になろうとしている。
それだけが俺の頭の中を満たしていた。
余分なものは床に散らばった髪の中に紛れ込んでいるのだろう。
それももうすぐ俺たちの真の愛の証となる精液の白さで塗り潰され、浄化されるのだと思うとたまらない気持ちになった。
思わず俺は角谷にキスをすると、驚いたような様子を見せながらもすぐに応えてくれる。
「いいぞっ、口吸いも行え。互いの精気を口からも交わし合うのだっ!」
舌を絡め合う俺たちは返事はできないけれど、その教えを深く頭に刻み込んだ。
地下室は若い2人の男の熱で温度が上がっていく。
睾丸がせり上がってくるのを感じながら、俺はこれから男として何をすべきか。角谷と模索する未来を想像して、互いの唾液や汗にまみれた坊主頭をテカらせて笑みをこぼしていた。