悪そうなヤツはだいたいトモダチ
🕑 Added 2024-05-23 08:12:18 +0000 UTC
「へぇー、やるじゃん」
夜のゲーセンでゲームをしてたら、背後から声をかけられた。振り向くと金髪のヤンキーがニヤリと笑いながらおれを見おろしていた。
「これ、お近づきのしるし」
ヤンキーはそう言って10枚重ねた100円玉をおれのプレイする台に乗せた。
「トモダチになろうぜ」
耳元に顔を寄せて囁かれた。
ヤンキーの名前はリュウくんといった。リュウくんはおれの名前をヨーヘーと呼んだ。ヨウヘイではなく、どこか投げやりな口調でヨーヘーと伸ばす発音がおれには新鮮だった。
そもそも学校には馴染めていなかった。公立に進んだらサッカー部がないと言われて、いやいや塾に通って私立を受験して入学したのに、部活は週に3日だけ。あとはわけのわからない放課後講習なんて名前の強制授業が行われていて、入学から1ヶ月足らずでおれはサボりを覚え、繁華街のゲームセンターに出入りするようになった。
「来いよ。ヨーへー」
リュウくんの声変わりした低い声で呼ばれると、おれはなんだか自分も大人になった気がして、リュウくんの真似をしてポケットに両手を突っ込みながら歩いてその後を追った。
リュウくんは18歳だった。留年しているので、来年もまだ高校に通わなければいけないらしい。ダルいから中退してえんだけどな、と言いながらも、どうやら親と不仲らしくその許可がおりないのだそうだ。子供って息苦しい。はやく大人になりたい。自分のことくらい自分で決められるのに。
ある日、リュウくんと、そのトモダチたちが映画館に行くと話し出した。
「おれも行きたい」と言うと、リュウくんのトモダチの一人の銀髪でサングラスをかけた男が「残念だったな、ヨーへー。まだ毛も生えてねえガキには行けねえとこだよ」と笑った。
おれはその言葉を聞いて一瞬ぽかんとしてしまったが、その意味がわかってすぐに顔を赤面させて「もう毛くらい生えてるし!」と言い返した。
「嘘つけ。おまえまだ全然チビじゃねえか」
「生えてるよ。嘘じゃねえもん」
「っつーか、どこの毛の話かちゃんとわかってんのか? ヨーへー?」
リュウくんがニヤニヤ笑いながら聞いてきた。
「……チンチンの毛だろ?」
おれがそう答えると、リュウくんたちはドッとわきたつように爆笑した。
「チンチンだってよ」
「かわいいなあ、ヨーへーは」
リュウくんはおれの頭に手を乗せてポンポンと撫でるみたいに叩いた。
「バカにすんなよ!」
おれは恥ずかしさで赤面しながらその手を払いのけた。
「いいじゃねえか。ヨーへーみたいなお子様は、まだチンチンの方が似合ってるぜ」
銀髪の男までおれの頭を撫でてきた。おれはそれを振り払い、赤くなった顔で男を睨みつけた。
「チンポとチンチンの違いがわかんねえんだろ。仕方ねえよ」
顎髭を生やした男が笑った。こいつは一見おっとりしてるけど、喧嘩になるとべらぼうに強い。前にリュウくんたちと他のグループとの喧嘩に遭遇したとき、男がその大柄な体躯を活かして相手グループの不良たちを次々と気絶させていくのをおれは見ていた。いまではそのときのグループはリュウくんの配下になっている。
「同じもんだろ!」
おれは恥ずかしさを隠すために怒鳴り声をあげたが、まだ声変わりもしていない、自分の甲高い声が嫌になった。リュウくんたちとは似ても似つかない、ガキくさい声。学校の連中と自分が似ている気がしてくる。あんな奴らと一緒になんかされたくないのに。
「ちげえよ」
リュウくんが急に笑いを止めておれの目を覗きこむみたいにして言った。「チンポとチンチンは全然違うもんなんだぜ? ヨーへー」
「おいおい」顎髭の男がリュウくんを諌めるみたいに口を挟んだ。「まさかもうヨーへーに植えるつもりじゃねえだろうな?」
「さすがにまだ早くね?」
銀髪の男が続けた。
「いいんだよ」
リュウくんが答えた。
「この分だとこいうセーツーもまだだろ? その状態で植えてやった方が、たぶんおれらよりもよく育つぜ」
おれはリュウくんたちの話していることがさっぱり理解できなかった。おれがガキだからバカにされてるのかと思った。だから強がって、今度はすこし心なしか低い声にして言った。
「セーツーだってもうしてるし……」
嘘だった。セーツーが、おそらく保険の教科書に載ってる精通のことだとなんとなくはわかっていたけど、おれはまだ精通なんかしていなかった。毛だって生えてない。すぐにバレる嘘をついた後ろめたさで、おれはリュウくんから目を逸らした。
「ほぉー」
リュウくんは腕を組み、いつものニヤニヤ笑いを浮かべながらおれを見た。
「セーツーしてんのか?」
「……してる」
「毛も生えてんのか?」
「生えてる……すこしだけど」
「じゃあ見せてみろ」
「えっ?」
おれはリュウくんの顔を見つめた。目が合うと、口元はニヤニヤしているのに、目がまったく笑っていなかった。敵グループを潰すときと同じ顔をしていた。
「男ならそれくらいのことできなくちゃな」
おれはリュウくんの他のメンバーの方へと助けを求めるように目を向けた。けれど、みんな同じ顔をしていた。口元は笑っているのに、目が笑っていない。これはもう冗談にも言い逃れることもできないとわかった。そんなことをしたら、おれはリュウくんたちのグループから外されてしまうだろう。そんなのは嫌だった。
「……わかった」
おれは頷くしかなかった。
ジーパンのチャックに手をかけて、小便するときみたいにジーッとそれをおろした。ベルトを緩め、ストンと膝までおろす。股間を覆う真っ白なブリーフがあらわれた。
「かわいいパンツだな」
銀髪の男が茶化すように笑った。おれは顔がふたたび赤くなるのを感じた。しーっ、と人差し指を唇にあてて、リュウくんが男を黙らせた。
「ヨーへー。それも早く脱げよ」
おれは黙り込んだまま拳を握りしめた。このパンツをおろしたら、毛が生えていないことがすぐにバレてしまう。精通していないことも、きっとすぐにバレるだろう。何をどうすれば精通になるのかなんて知らないけれど、リュウくんたちは大人だからすぐにそれも見透かされてしまうにちがいない。
とたんに、目頭がジワッと熱くなった。涙が溢れてきたのだ。
「ごめん……なさい……」
「なにを謝ってるんだ?」
リュウくんが、相変わらず目の笑っていない笑顔でおれのうつむいた顔を覗きこんできた。
「本当は……毛生えてない……」
目から涙がこぼれて落ちた。
「だからなんだ」
低くドスの効いた声がした。誰の声か一瞬わからなかった。でもそれはリュウくんの声だった。
「いいからとっとと脱げ。そして見せろ。おまえは自分で言ったことの筋を通さなきゃならねえ。それができねえなら男じゃねえ」
涙がつぎつぎと溢れてきた。みんなにおれのガキくさいチンチンを見られるのが死ぬほど恥ずかしかった。でもリュウくんに「男じゃねえ」と言われる方がもっとつらかった。おれは目をつぶり、両手をブリーフにかけ、一気にそれを膝まで引きおろした。
ちぢこまったチンチンが姿をあらわした。毛も生えていない、親指の先くらいの大きさのチンチン。玉も飾りみたいで、小さい。精通は精子が金玉で作られるようになることで始まると教科書には書いてあった。おれの小さな金玉では、まだそんなもの作られていないだろう。
「やればできるじゃねえか」
リュウくんが頭を撫でてくれた。おれは目を開けてその手を見上げた。優しそうな顔になったリュウくんがいた。他のみんなも、いつしかさきほどまで漂わせていたピリピリした空気は消えてなくなっていた。
「リュウくん……」
「ヨーへーも男を見せたからな。おれも見せてやらねえとなんねえな」
リュウくんはそう言ってゴソゴソとジーパンを脱ぎ始めた。おれと違って躊躇もない、手慣れた脱ぎっぷりだった。
「チンポとチンチンの違いをよーく見比べてみろよ」
銀髪の男がおれに言った。おれはなにが起きているのかよくわからなかったが、あっという間に黒のボクサーパンツ姿になったリュウくんを目の前にして、次になにが起きるかわかった。
リュウくんがパンツをおろした。おれのチンチンとは比べものにならない、太くて黒いチンポがそこにあった。根本からボーボーに毛が生えていて、先端はなんだか見たこともない形をしていて色が赤黒く変わっている。
「すげえ……」
おれは思わず手を伸ばして触ろうとして、でもそれはまずいと手を引っ込めようとした。
「いいぜ。触ってみろよ」
リュウくんはおれの手を掴んで自分のチンポを触らせた。「いまからおまえを作り替える大事なもんだからな。よーく見とけよ」
その言葉の意味もわからなかったが、おれは夢中になってリュウくんの大人チンポを触った。握ったり、持ち上げたりしているうちに、それはムクムクと硬くなって起き上がり、鎌首をもたげた蛇みたいにおれの方をその赤黒く腫れあがった先端で睨みつけるのだった。
「なにこれ……」
「勃起っつーんだよ。聞いたことねえか?」
「わかんない教科書には載ってなかった」
「大事なことは教科書なんかに載ってねえんだよなあ」
銀髪の男が歌うような口調で言うと周囲から笑いが漏れた。いつのまにか、全員がチンポを丸出しにしていた。みんなそれぞれ形は違ったけれど、どれも黒くて毛が生えていて先端が赤黒くてエロかった。
「勃起したらしごくんだ」
リュウくんがそう言って右手でチンポをしごきはじめた。おれはそれを見て何故だかドキドキした。
「おまえもやってみろ」
リュウくんに促されて下を見ると、おれのチンチンも小さいながらに一生懸命に「勃起」していた。リュウくんたちのとは全然違うけど、同じく上を向いて硬くなっている。それがなんだか嬉しかった。
リュウくんの真似をしておれもチンチンをしごいた。なんか変な感じがして腰が引けそうになったが、「男なら腰を前に突き出せ」とリュウくんに言われたので我慢した。ますます変な感じがして、体の奥底からムズムズするような、くすぐったいみたいな気分になりながらチンチンをしごいた。
まもなく、なにかが起こった。ケツの穴と金玉の奥がギューっと締め付けられるような感覚に陥った。
「リュウくん……なんかチンチンの奥が変……」
おれは体育の授業で100メートルを全力疾走した後みたいに呼吸を荒くしながら訴えた。
「我慢して続けろ。男になりたいだろう?」
リュウくんがニカッと笑っておれを見た。おれはリュウくんに認めてもらいたくて、その変な感じがするのを我慢して腰をもっと前に突き出し、無意識に速度をあげてチンチンをしごいた。
「あっ……リュウくんっ……ダメかもっ……やばいっ!」
おれのチンチンの先端から、カルピスみたいな液体が勢いよく飛び出してきた。同時に、これまで味わったことがないような、背骨と脳みそが痺れて震え上がるような気持ちよさに襲われて、おれは全身を痙攣させて甘ったるく甲高い叫び声をあげた。
はあっ、はあっ、と息を整えるおれの頭をリュウくんが撫でた。
「すごいぞ、ヨーへー。おまえ精通したじゃねえか」
これが精通? おれの足もとにはチンチンから飛び出した白い液体がジュースでもこぼしたみたいに飛び散っている。
「もうおまえのはチンチンじゃねえ。チンポの仲間入りだぞ」
リュウくんのその言葉に、おれは嬉しくなった。
「すぐに株分けして仲間にしてやるからな。精通してたら、すぐに着床すっから、心配すんな」
リュウくんはよくわからないことを言って、高速でチンポをしごきはじめた。いつのまにか他の仲間たちは全裸になって絡み合っていた。銀髪の男の尻穴に、顎髭の男の勃起したチンポが挿入されていて、出たり入ったりしている。ヌチャヌチャとなんだか恥ずかしくなる音が響いている。
「おー、やったじゃねえかヨーへー」
顎髭の男がおれに向かって微笑んだ。
「その歳で株分けされたら、おれよりもデカくなるぞ。おれはおまえの一つ上で株分けされたけど、身長も190まで伸びたからなあ」
銀髪の男がAVの女みたいな声をあげている。もうとっくに声変わりした低い声のはずだったのに。ああん、ああん、ああん、ああん、だめえっ!と叫んでいる。勃起してそそりたったチンポの先端から、とろとろと白濁した液がとめどなく流れている。その液のなかに、黒いゴマのような粒々が混じっているのが見える。おれの精子にはあんなものはなかった。真っ白なだけだった。あれも大人になったら出てくるようになるのだろうか。
「イグゥっ!!」
リュウくんの低い雄叫びが響いた。おれがそっちに目を向けると、拳くらいの大きさに肥大したリュウくんのチンポの先端から、なにかが産まれるかのようにメリメリと出てくるのが見えた。青い色をして、イソギンチャクみたいな見かけをしている。こんなものをおれははじめて見た。
「リュウくん。それなに……?」
荒い息を整えているリュウくんにおれはたずねた。
「これか?」
リュウくんはおれに向かって笑いながら答えた。
「おまえの睾丸に植え付ける株だよ。この街の不良は全員こいつらに寄生されてるんだ。筋肉も増えて、背も伸びるし、強い雄になれるからな。こうやっておまえみたいな下の奴らに株分けしていくことで、いつか世界を征服するんだよ。おまえは私立のいいとこに通ってるからな。支配を広げるのにちょうどいいんだ。任務をまっとうして、立派な雄になるんだぞ」
リュウくんがなにを言っているのかわからなかった。おれがぽかんとしているあいだにリュウくんはおれのチンポにそのイソギンチャクみたいなのを近づけた。次の瞬間、それはおれのチンポの先端をこじ開けるみたいにしておれの体内に侵入してきた。
「あああああああっっ!!!」
おれの叫び声は男たちの交尾の音と喘ぎ声にまぎれてどこにも届かなかった。
「2組の河口ってやべえ奴らとつるんでるんだろ」
「らしいな」
「おれ、塾行く途中にあるゲーセンの近くであいつが高校生っぽい奴らと笑って話してんの見たことある」
「ガタイもやべえよな。おれらの学年で一番でけえだろ。サッカー部も辞めたはずなのに運動部特待生よりも筋肉のかたまりみたいだし」
「でもなんかカッコいいよな。エロいっつーか」
「は? どこがだよ?」
「あんなやべえやつと関わったら人生終わりだろ」
「成績は悪いみたいだしな」
そこまで聞いてからおれは音を立てて教室のドアを開けて中に入った。
「あれ? わりー。自分の教室と間違えたわ」
おれの顔とガタイを見た奴らは、一目散に逃げるみたいにして教室を出ていく。
おれはその中の一人の肩を叩いた。
「おれがカッコよくてエロいんだって?」
そう言ってニヤリと笑いかけてやる。そいつは頬を一瞬だけ赤らめる。脈アリだな。こいつはイケるとおれは確信する。
「これからおれと一緒におれのトモダチたちと遊ばねえ?」
「でも、おれ塾があって……」
「一回くらいサボって息抜きしようぜ? ついでにいろいろ抜いてさ」
最近じゃリュウくんに似ていると言われるニヤニヤ顔で迫ると、そいつは「今日だけ、なら……」と教室を出ようとする足を止めた。
「ああ、今日だけならいいだろ」
今日中にこいつにも株分けしてやろう。特進クラスのやつだから、そっちでも支配は広まるだろう。
仲間なのかと思っていた奴らは、あっけなくこいつを見捨てて帰って行った。男気がねえったらありゃしない。はやくこいつも男にしてやらねえとな。っていうか、こいつ毛生えてんのか? 精通もしてるか怪しいな。ま、そこはリュウくんがうまくやってくれるだろう。いまじゃ担任教師よりもよくなったガタイでそいつの肩に腕をまわし、「じゃあ、遊びにいこーぜ」とおれはリュウくんたちの待ついつものゲーセンへと向かって新たなトモダチ予定者を連れて歩き出した。