僕と百合と恋敵
🕑 Added 2021-02-27 13:46:45 +0000 UTC
物事は変わる。スイッチ一つで、一気に。
眠気はコーヒー一杯で吹き飛び、日常には時折魔が宿る。
一蹴りで。
「あ」
「ぎゃっ!?」
朝の通勤列車、車内へ乗り込む無数の少女たち。そのうち一人に蹴飛ばされて僕は、したたかに床へと叩きつけられていた。
「ん、ごめん」
そう言って脚の主が、僕を立たせてくれる。
「怪我はなかった?」
「は、はい……」
「ん、よかった」
そして、恨めしくその脚の主を見上げた時。
僕は、思わず言葉を失った。
それは、僕の2倍はある躯体を持った美女だった。ほかの女性と同じ、男を高みから見下ろすその長身。けれど彼女はその中でもさらに高く、おそらく170㎝は下るまい。なにより、その凛とした中性的な見た目。大学生くらいだろうか、その静かな目と声で問われて僕は、ただ必死に頷くことしかできない。
「そ。それじゃ、気を付けてね」
そして。
それだけ。
それだけだった。
蹴飛ばされて、起こされて、ただ、真正面から見つめられてしまっただけのこと。それだけで僕の日常は、一挙に変容してしまったのだ。
毎日同じ便に乗って、彼女に会おうと姿を探す毎日。向こうがどんなスケジュールで動いているのかもわからないのに、なぜだかと確信して足を運んでしまう。
そして、数日の後。
本当に僕は、彼女と再会することができたのだった。
(……きた!)
一足車内に踏み込むだけで、空気が変わる。
それほどまでに、不思議な人だった。
中性的というのだろうか、肩にかからない程度のショートカットで、どこか男装が似合いそうな凛とした顔立ち。切れ長の目元も重い瞼でどこか眠たげで、ジト目と言って良いかもしれない。そして傍観者然と周囲を眺めては、どうでもいいという感想すら漏らさず瞑してしまう。中性的で儚げで、けれど目を離すことを許さない存在感を持つ人だった。
或いはそれは、その圧倒的な体つきのせいかもしれない。
2倍サイズの少女たち、それを頭一個分突き抜けた身長はスラリと高く美しい。けれどそれをただの長身にしないのは豊満な肉体で、シャツをパツパツにする大きな乳房、スカートを押し上げ僕を見下ろす豊かなお尻、そこから伸びる生脚も僕を悩ますには十分すぎる肉付きだ。凛としたシベリアンハスキーにどこか似ていて、だのに女性的な、あまりに女性的なこの肉体。それがただならぬ存在感を放つのは当然のことだった。
そんな姿を、見るだけ、ただ見つめるだけ。
それだけで僕は幸せだった。
これ以上望めば、何かが崩れる気がして怖かったのだ。ただ控えめに、僕は彼女と同じ電車に乗れる幸せを享受していたた。
電車に乗る、林立する脚に圧し潰される。女性の半分の体格を駆使し、なんとかその脚の間に居場所を見つける毎日。そして学校に向かい、名目上生徒として、事実上は召使いとして、いつか少女に拾われる日を待ちわびる。
そんなハードな時間が、こんなにも楽しくなるだなんて。
日々、車内で凝視する彼女の姿。幸いこの体格差、彼女の視線は胸で遮られ意識は本の中だ。罪悪感を覚えながらも、でも、どうしても僕はその凛とした悩ましさを見つめずにはいられない。ノースリーブシャツの腋からはみ出しそうなほどの豊満バストが、むちむちとしたその下半身が、圧倒的な存在感で僕の前に広がっている。それだけで幸せになってしまうのだから、僕も単純なものだ。
スカートから伸びる生脚を、はちきれんばかりのおっきなお尻を、胸を、腋を……。
そうして視線を這い上らせ。
ピタリと、サファイアブルーのジト目と目が合った。
目が合った。
目が合った!
ガラス器のぶつかったような感触と共に慌てて僕は視線を離すけれど、彼女は本を閉じ完全にこちらに注視している。
それから、フッと笑ったのだ。
(~~~っ!)
かぁっと赤くなる顔を伏せる。もう涙が滲みそうなくらいだ。
ダメだ。逃げたい。穴があったら入りたい……!
衝動的にその場をたち、僕は降車しようと足早にその場を逃げてしまう。
そして、ドアが開くのを待って。
待ち受けていたのは、乗り込もうとする少女らの脚だった。
それが、足元の小男に気づくはずもなく──
「気を付けて」
雪崩れ込む無数の美脚、そこから救ってくれたのは例の彼女だった。急にごった返し始める車内、ひしめく同性の体から僕を守るように彼女は僕に覆いかぶさってくれる。まるで長身女性の体の鳥籠に囚われたかのようだ。
「危ないよ」
「は、はい……」
体を張って守ってもらっている、その状況にときめいてしまうのだからどちらが女子やら。けれど頭上で重そうに吊り下がっている乳房は紛れもなく巨乳で、その甘い香り、そびえる美脚の門、そのどれもが僕をオスにしようと囃し立ててくる。
まずい。
どうかなりそう。
どこに目を向けたらいいのかもわからず、僕は脚へ、胸へ、香りへ、交互に意識を奪われては赤面するばかり。モジモジすればバレそうで、けれどジッとしていればもっとバレそうで、どうしたらいいのかわからなくなってしまう。
あまつさえ、カーブで大量の女体がのしかかってきたりなんかすれば。
「ぐ、ッ~~!」
あろうことか、あのおみ脚に圧し潰されてしまうのだ。
グリッと股間にめり込む丸い膝。上半身がめり込む太もものぶっとさに圧倒されれば股間は更に反応してしまって、もう、何も隠せなくなる。
「……」
「あのっ、すっ、すみません、ホントにすみません!!」
泣きそうになりながら太ももに潰される僕。ペチペチと肌を叩いてギブアップを伝えるも、物言わぬ美脚は僕を組み敷いたまま。どころか、まさぐるようにグリグリッと膝を動かすものだから、僕は完全に勃起させられてしまう。
「…………」
「あのっ、ぐッ……!! ごめんなさい、許して、許してぇ!」
グリグリと、その膝責めは甘く苛烈で。怒っているのかいないのかもわからないまま、無言の拷問に思わずマゾヒズムさえ催してくる始末。見上げようにも顔は下乳に隠されまるで見えない。
けれど一瞬、谷間の間から見えた口元は。
フッと笑っていて。
「……!」
遊ばれている。そう気づいた瞬間僕は膝で掬い上げられた。太ももに跨らせられ、体を持ち上げられてしまったのだ。
「お、降ろしてください! ごめんなさい、謝ります、謝る、からッ、……むぐっ!?」
不安定な膝の上、何とか降りようと慌てる顔を圧し潰したのはあの爆乳だった。丸々とした乳で顔を圧し潰し、その香りを嗅がせるように押し付けてくるのだ。押しのけようとする腕も掴まれ、下半身はむっちり太ももの虜。そのまま彼女が体重をかければもう、僕は完全に女体プレスでぺちゃんこだった。
「む゛―――ッ!! ん゛―――ッ!!」
藻掻こうとする僕を潰れおっぱいで包み込むように、ツグミさんは身を壁に摺り寄せる。何もできない男に、気まぐれで自分の豊満ボディを染み付かせるつもりらしい。もちろんこんな巨大な肉体の蓋、僕に押しのけられるはずもない。もう誰にも気づいてもらえないまま、ひたすらこの殺人的なむちエロボディを叩き込まれてしまうのだ。
「そういえば」
「~~~っ!!」
「名前、言ってなかったね」
思い出したように言いつつも、ギチチッと加重を強め僕を甚振るむちむちな体。その温度差が一層僕を惨めにさせ、倒錯した興奮をひき出した。
「私はツグミ。覚えた?」
そう言いつつ、グイグイと太ももを押し付けてくるツグミさん。名前を知ってしまったこの巨体になぶられて、ダメだ、イク、イカされ……っ!
と、その瞬間。
ドアが開いた。
「ん、おしまい」
瞬間、身をもぎ離し僕を足元に落とすお姉さん。
そして僕をローファーで蹴り上げると、そのまま車外へと叩きだしてしまう。
「じゃ」
そう言って自身もホームへ降りると。
そのまま僕を放って、スタスタ歩いて行ってしまった。
§
爾後数日。僕はもう、恥ずかしくって電車にすら乗れなかった。いや、嘘。本当は悶々としてツグミさんを探すのだけれど、見つけるなりたまらず逃げてしまったのだ。
けれど、もう一度、もう一度。
そう思いつつ、休日の電車に揺られる情けない僕がいた。
会えるかな。会うのは恥ずかしいな。そんなことを思いながら、女性サイズの座席に恐縮して座る。女の人のお尻で潰され続けて、大きく凹んでいるクッション。その4倍の尻面積に座るだけで、どこかドキドキしてしまう。
そして、次の駅。
「……あ」
乗り込んできた人影に、思わず心臓が飛び上がった。
ツグミさんだ。
それも、あの時僕を圧し潰したのと似た出で立ち。一気に心拍数が跳ね上がる。ノースリーブシャツにタイトスカート、黒タイツ、およそOLのような大人びた出で立ちに、思わず自分が子供になってしまったようだ。似合わないわけがないその格好を見せつけられ、僕はどうしたらいいのかわからない。
休日のツグミさんに会えるなんて。さっぱりとした短髪に、ノースリーブがよく映えている。黒タイツも美脚を強調して、その茶色くぴっちりした金属光沢から目が離せない。
そんな熱視線に気づいたのか。
「……」
不意に、こちらに気づいたご様子の女神様。
それから、何も言わず近づいてくると。
僕の前に立った。両手でぶら下がるようにつり革にすがり、こちらを覗き込んでいるのだ。
腕で寄せられ強調される胸、ノースリーブから覗く悩ましい腋。腱に引っ張られできた肉シワがあまりに官能的で、もう僕はうつむくしかなかった。
「……」
なんで、何も言ってくれないのか。いつものようにジト目なものだから無言の圧力はひとしおで、思わず冷や汗が吹き出してくる。
吹きおろしてくるツグミさんの少し汗ばんだ香り。威圧感ある、ムチムチ豊満なその躯体。
それが、くるりと振り返ると。
「……?」
そのまま、腰を下ろし始めた。
「ちょっ、ツグミさん!?」
ぐんぐん視界で膨らむ巨女の巨尻。しかもタイツの茶色が視界の中で膨満し、タイツのおかげでボリューム感は倍増だ。惜しげもなく見せつけられる紫ショーツは谷間に食い込んで、次は僕がああなる番だと物語っていた。
あとは一瞬。