さかさまらてあーと
🕑 Added 2020-01-31 08:01:29 +0000 UTC
§
不規則なグラフとにらめっこしていた。
そんな折のことだった。
「ねえご主人、ご飯まだなんだけど」
聞こえてきたのは、足元から湧くふてぶてしい声。
けれど、声の主の姿が見えない。
「……ん、モカか。すまん、忘れてたな。……どこだ?」
「ここだって。ほーらっ、ここっ!」
そう言って脚の間で飛び跳ねる何か。座面の下からひょこっと覗くそれは、2つの丸い三角形だ。
銀髪から突き出たそれは犬耳。ヒコヒコ動くその奥から、褐色の相貌とキラキラ輝く瞳が、俺を見上げていた。
「早くしてよ! もう1時間も待たされてるんだから」
それは、身長60㎝の小さな犬耳褐色娘。
俺が引き取っている、犬妖精のモカだった。
「待ってろ。今終わるから……、ん?」
今度は横から、裾を引かれる感触。
そこには小さな色白の美人が立っていて。
「……」
ジッと、俺を見上げているのだ。
ルナの伏し目がちな、少しダウナーな視線が俺を見上げる。座面からようやく顔が見える程度の大きさで、けれど、その視線はまるで姉が命じているかのようだ。
「だからなルナ、すぐ行くから待ってろって」
「……」
ウェーブがかったベージュの髪の奥、ダウナーな瞳が俺を見上げる。大人びた、けれど何を考えているか読みにくい、マイペースなお姉さんと言ったところ。そんなルナが人形じみたサイズで俺を見つめるのだから、感じるのは庇護欲やら無言の圧力やら。
「わかった、わかったから」
黒白2色の犬耳娘が並んで俺を見上げる。Tシャツの袖を結んだ快活褐色娘と、ホルターネックをスラリと着こなす茶髪美人。
それぞれ成熟した犬っ子だが、ぬいぐるみ程度の大きさによって愛くるしさがまさっていた。ほっとけないのだ。尽くしたくなる。
「これでいいだろ?」
しまっておいたエサを取り出し、一袋ずつ開けてやる。小人では開けられないよう、開けにくく設計されているのだ。賢い犬妖精だって、こればっかりは飼い主に頼むしかない。
「ご主人、ありがとー」
「……ありがと」
トテトテと去っていく小人美少女の背中。
もう、すっかり見慣れた風景だった。
⁂
——ことの発端は数か月前。
古馴染みの女友達が言ったのだ。
「冴人、引き取ってほしいものがあるんだけど」
「壺はいらんぞ。怪しい化粧品もな」
「……私のこと何だと思ってるの?」
彼女に遠慮はいらない。気の置けない親しい友人が彼女だ。ムッとした表情を軽く笑い飛ばし俺は尋ねた。
「それで、何をもらえばいいんだよ」
「犬」
「犬? ペットか?」
「そ。まあ、クー・シーだけど」
「……犬妖精か」
奥地に隠れ住んでいた小人たちが見つかって、早半世紀。
知恵と魔法を操る、孤高の小さな妖精たち。美しく温厚で、けれどその力は人間にとっても脅威になりうるほどのもの。
或いは、それがまずかったのかもしれない。
驚きふためいた人間は、彼女らを離散させ、魔力も牙も抜いてしまった。
結果、今では可愛い愛玩物だ。
……まあ、猫や犬と同じこと。人間に奴隷のように尽くされているのだから、わからないものだ。
そんな事情を知ってか知らずか。彼女は慣れた手つきで、小さな妖精を籠から抱き上げた。
「この子たち。ね? かわいいでしょ?」
「ん、あぁ……」
けれど、言葉はそれ以上続かない。
言葉を失うまでに、2匹は美しかったのだから。
細い腕の中には、まとめて抱き上げられた更に細い少女の影。
長い銀髪に褐色肌、短い褐色髪に白い肌。対象的な二人が、共にケモ耳をへんにゃりと倒し不安げにこちらを見上げていた。
こんなに愛くるしい生き物がいたなんて。
わが目を疑うほど。
「茶色いのがモカで白いのがルナ。わかりやすいでしょ?」
「……見た目も服装も、全部趣味で選んだだろ」
「そ。わかる?」
「わかるってそりゃあ……」
ルナとか言った娘は、シャツに短いスカートという出で立ち。だが、大人びた美人にニーソが加わり、どこか倒錯的な印象を覚える。褐色娘など、スパッツにTシャツ、しかも裾をまくり上げお腹さえ丸見えな格好だった。腰と胸だけ隠して、まるでチューブトップだ。
「海外転勤なの。いつ帰れるかもわからないし、連れてもいけないし……。わかるでしょ?」
「そりゃ構わんが……、こんな美少女、普通男に預けるか?」
「だってあんた、自分より長身の女じゃないと興奮しないじゃない」
「……うるせぇ」
苦々しく漏らす。が、返す言葉もなかった。
だって、図星も図星。
俺は、長身女性にしか性欲を向けられない性質だった。
自分より小さな存在が不安なのだ。自分の力が暴力になってしまうのが嫌だ。安心できるのは大きなもの、昂るのは強いもの。
それを笑い飛ばせる性格だからこそ、こいつとの付き合いも長かった。
「あんたなら丁寧に扱うでしょ。それに、一日中家に引きこもってるなんてあんたくらいのもんだし」
「心外だな。トレーダーなんだから仕方ないだろ?」
「はいはい。……とにかく、よろしくね」
間もなく、彼女は日本を発った。
残ったのは俺と、可愛い犬っころが2匹。
銀髪褐色娘と、茶髪色白娘、ツートンカラーの2人はもう、俺の愛犬だ。
……だが同時にそれは、苦難の始まり。
この生き物、とんでもなく自由なのだ。
勝手気ままもいいところ。賢いが甘えん坊で、欲望に忠実なのが彼女だった。長い愛玩動物の日々の中で、かつての尊厳も忘れたのか。或いは、こいつらが特別リベロなのか。ともかく2匹との生活は、活発なゴールデンレトリバーと自由人なシベリアンハスキーを同時に飼うに等しいものだった。
今でさえ。
「こーらっ、噛むな!」
「あいたっ!」
ガジガジと指を噛む褐色娘に弱くデコピンをする。歯が痒いらしい。最近いつもこんな調子だ。
恨めし気に俺を見上げるそんなモカは。
上目遣いに俺を睨みながら——
「……あむ」
「だーかーら、噛むなって!」
再び指にかみつくのだ。
二度目のお仕置きをかましながら、ため息をつく。
考えているんだかいないんだか。自由奔放とはまさにこのこと。
そのまま、呻くように俺はつづけた。
「ルナも、そこに座ると仕事ができないんだが」
「うん」
「うん、じゃなくてだな」
「うん」
俺の膝の上に座り込むのは、大人しくも気ままな色白娘だ。すこしウェーブがかった亜麻色の髪を肩まで垂らし、短いスカートから脚を投げ出していた。後は微動だにせず俺の上に占領したまま、動き回る画面を虚心坦懐に見つめている。
懐いているのかどうか。なにぶん何も言わないからわからない。或いはこれはマウンティングで、自分の上位を主張しているのかもしれなかった。
「勘弁してくれ!」
たまり兼ねた俺は二匹を小脇に抱え上げ、部屋の外に放逐する。
そして、ドアを閉めれば。
「遊んで~」
賢い妖精種はいともたやすく侵入してくるのだ。
「お前らなぁ……」
クー・シーの知力を侮ってはいけない。教育すれば、知的労働だってお手の物だ。
何より二人は、俺が逆らえないことを知っていた。
まとめて相手出来る体格差ががあるからいいものの、知的動物の多頭飼いだなんてするものではない。彼女らを見つけた人々が、その魔力を恐れたのも頷ける。生物としては、本質的に二人の方が数段上手なのだ。
すっかり俺は脱力して、為すがままに任せる。
そんな俺の苦悩を知ってか知らずか。
「サエト……」
再び俺の膝によじ登ってきたルナは、俺を見上げる。
そして、にへらーっと笑ったのだ。
それは、普段の凛とした無表情からは想像もつかない甘い笑顔だった。
思わずドキリとしてしまう。当然だ。無口美人に子供っぽい笑顔を投げかけられて、ときめかないはずがない。
けれど次の瞬間には、まるで何もなかったかのように元のしぐさ。
とてもじゃないが、敵わない。
ヒト科のオスは呻くように天を仰いだ。
……そんな脳裡に、少しの不安がよぎる。
2匹のそぶりに、よくない兆候が見えたからだ。
次第に執拗になっていく甘噛み。摺り寄ってくる二種類の肌、熱っぽい顔に求める顔。
再び、この季節が来てしまったらしい。
……放っておくわけにはいかなかった。二人にするとやがて求めあうのだ。あふれ出るミルクをなめ合ったり、抱きあったり。悪いことではないかもしれないが、俺が放置したせいで仕方なく及んだ行為なら、忍びない。申し訳ないとは思いつつ、綿棒で処理してやるのが常だった。これが精一杯の誠意だ。
(体格が逆ならいくらでも相手をしてやったところだが……)
俺は、小さな生き物に性欲を向けられるタチではなかった。
野生の性欲は深く激しい。
小さな体からは想像もできないほどの熱量で、2匹は肌を求め続けた。魔力を抜かれて、生命力が恋しいのか。トロンとした小犬には、男の俺でも抗しがたい力があった。
滾る生命力。
それを無理やりぶつけられる相手がいれば。
ただでは済まないだろう。
俺はそれを、身をもって知ることになる。
⁂
ゆるやかに高まる2匹の力場とともに、爾後おだやかに日々は流れ。
或る日の朝。
「ご主人、持ってきたよ~」
そんな声とともに、トテトテと足音が寄ってきた。見れば互いにギュッと手を結んで、配達物を届けてくれる賢い2匹。
「よしよし、良い子だね。……ん、あそこか」
渡されたのは、株主優待で回ってきた小包みだ。
配達元は、或る企業。2匹を引き取って以来興が沸いて、少し突っ込んでみた妖精関連の企業、これが最初の配分だった。
「中身は、……なんだこれ」
開けてみれば、面妖な溶液。キラキラ不思議な輝きを放ち、どうも何某か力がこもっているらしい。
こんなものもあるなんて。世の中わからないものだ。
「……でも、こんなの送り付けられてもな」
扱いがたい。いかんともしがたい。
何より、仕事で疲れて一区切りしたい気分だ。
ブツは適当に机に転がして、俺は休憩がてらトイレへ向かった。
「出資やめよっかな……」
便器で祈りを捧げながら独りごつ。だって、俺に渡されても使い道がない。原油の小瓶をもらったようなもの。この調子じゃ、金銭的なリターンも覚束ないし、投資家として適当過ぎた行為かもしれない。
「第一、魔力なんてなぁ。クー・シーならいざ知らず俺は、…………ん?」
魔力……?
手を洗いつつ、はたと気づく。
そして慌てて部屋に戻れば。
そこには、怪訝げに石を囲む2匹の姿があった。
「なにこれ」
「なんか、懐かしい感じ……」
いかにも犬といった感じで鼻を近づけ、けれどモカとルナは着実にその意味を思い出しつつある。
それは、人間が恐れて抜いた牙、かつて備えていた万能の力。
そんなものを、発情しかけの気まぐれワンコが手に入れでもしたら……!
「さ、触るなっ!!」
そして、つんのめって遮ろうとした、
その瞬間。
「「きゃっ!?」」
迸ったのは妖しい閃光。
不思議な熱波が身を通り抜ける。
それとともに、俺は宙に身を投げ出され……。
「お、わわっ、……ぎゃっ!?」
床へ叩きつけられたのだ。
「たたた……」
したたかに腰を打ち、うずくまる。
そんな背中を、大きく温かなものがさすってくれた。
「サエト大丈夫?」
「ああ。いや、俺こそすまん。そ、それより……!」
「うん。大変なことになっちゃったね」
「……ん?」
言葉より先に、感覚が何か不穏な事態を理解する。
違和感は当然のこと。
周囲は様変わりし。
巨大な布が周りに広がっている。対する俺は真っ裸。どう考えても、尋常ではない。
なにより。
スラリと高い見慣れぬ柱が、2本左右にそびえていたのだ。
「あーあ、やっちゃった」
「私たちも、魔法、使えたんだね」
「————え?」
ルナの一言とともに、ググっと屈みこんだのは絶世の美女たち。
俺をはるかに超える高身長の少女らが、エキゾチックな褐色と真珠色の肌を輝かせ、俺の顔を覗き込めば——
「サエト、ちっちゃくなっちゃった」
そこには、縮んだ俺を見下ろす、飼い犬少女の姿があった。
「……は? な、なんでお前らそんなにでっかく……」
「違うよ? サエトがちっちゃくなったんだよ?」
「ルナたちと、同じサイズになっちゃった」
頭上で揺れる、褐色娘の谷間とダウナー娘の谷間。屈んで見せつけるように押し出されたその胸の上では、あの愛くるしいケモ耳少女が俺を見下ろしていた。
間違いない、それはモカとルナ。
遠近法で歪むほど巨大な部屋を背景に、見知った姿がそこにいた。けれどそれは今や、240㎝はありそうな長身女性。イメージと視覚のギャップで、俺は目を白黒するばかりだ。
「お、同じサイズったって、……お前らの方が、ずっとデカいじゃないか!」
「ん? だってアタシたちフェアリーだよ?」
「ニンゲンより体格がいいのは、当然、でしょ?」
慌てて股間を隠す俺に、コテンと小首を傾げる2匹の犬耳娘。長い銀髪を揺らし、ウェーブがかった茶髪を垂らし、何を今さらと言わんばかりだ。
そんなペットの視線にさらされながら、呆然と俺は全裸で立ち尽くすほかない。身の丈4分の1にまで堕とされて、今じゃ2匹の子供のような体格にされてしまった。力を手に入れたワンコを前に、小人1匹何ができる?
「ふふっ、ご主人ちっちゃ♪」
「大丈夫? ルナ、慰めてあげよっか?」
2人に上から頭を撫でられ、かぁっと顔が赤くなる。これじゃ本当に2人の子供、お姉さんに遊ばれている坊やのようだ。
それにしても……。
等身大になって初めて知る、モカのぱっちりとした緑の瞳と、眠たげなルナの煙水晶のような瞳が美しい。ルナの方が、頭半分ほど高いことすら、知らずにいたのだ。
加えて、目の前で揺れるでっかいおっぱい。
俺の顔よりデカいボールが4つ、ギュッと谷間を作って並んでいた。
「ご主人か~わいっ♪」
「こ、こらっ、抱き着くな!」
「モカだけずるい」
「やめっ……ッ!」
褐色の顔がニパッと破顔する。次いで腕を開いたと思えば、ココア色の谷間が一気に顔面に押し寄せてきた。それは、チューブトップのように絞ったTシャツに、思いっきり強調されたドデカおっぱいだ。Gカップは超えそうな爆乳に襲われて、俺の体は木っ端のごとく跳ね飛ばされる。それを受け止めたのは、更にでっかくハリあるおっぱい。そのままバムバムッと挟まれれば、俺はケモ耳美少女の爆乳サンドで完全に窒息させられていた。
「あははっ、ご主人弱っち♪」
「えへへ、かわい……♪」
「お前ら、い、息が……ッ!」
ティラミスのような柔らかバストと、張力満点の色白おっぱいが、俺を豊胸グッズのようにこねくり回す。丸裸の股間が、反応しそうだ。当然だ。だってエロい感触に、敗北感。飼い犬に体格差で負けて、力任せに愛玩されるのだ。今までエサも服も全部世話してやったちびっ子ワンコが、今や犬耳をピコピコ喜ばせつつ巨乳お姉さんとなって俺を弄ぶ。
そのうえ、服さえ剥かれ、股間さえ掌握されて。ばるんばるんおっぱいのはざかいで、俺は思わず涙ぐんだ。
「そ、それより、戻してくれよ2人とも!」
「え~、つまんない!」
「もっと遊びたい」
「いいから! お願いだ、この通りだから……!」
今の俺は助けを乞うことしかできなかった。胸の影から二人を見上げ、異種族お姉さんに頼み込むだけ。気まぐれな2人にイニシアティブを握られるのが、こんなに恐ろしいなんて。不安のあまり、ルナのシャツに縋りつく始末だった。
「……。まあ、あとで遊んでくれるなら……」
「ほ、本当か?!」
「いいよね? モカ」
「……うーん、まあ、ルナがそう言うなら……」
「やった! ありがとう、お礼はするから!」
子供のようにはしゃいで有り難がる飼い主。元はといえば、2人のちょっかいのせいなのも忘れてしまった。
だって、それほどまでに2人は大きくて、強大で、美しかったのだ。全身褐色の姿はエキゾチックな踊り子で、凛とした長身美人は優しいお姉さんというにふさわしい。体格の存在感は絶大。ただ自分より大きいだけで、支配権を握るのは当然に思えた。
けれど。
「…………ん、あれ?」
「ダメだね」
「戻せない、かも」
上空で2人は、戸惑ったように顔を見合わせた。
一方俺は、遥か下方で慌てるばかり。
「う、うそだろ……?!」
「突然だったから、力が強すぎたのかもね」
「……あ、でも、アタシたちがおっきくなるのは出来そう」
「なら、モカたちがニンゲン大になればいいんだ!」
「待て、それはまずいって!」
「モカ、やってみよ」
「うん。……えいっ♪」
悲鳴を上げる俺などまるで無視して、2匹は勝手に話を進めてしまう。
そして、ヒョイッと指を振り上げれば———
「そ、そんな……」
立場の逆転が、始まったのだ。
ググッと、力を漲らせた長身族の体。
はるか頭上で互いに目配せすると、2匹はにっこり俺を見下ろしたまま巨大化を始めてしまう。
「待ってくれ! やめて、おっきくならないで……!!」
でも無情にも4本のおみ足はグングンと伸びていく。ついには、チョコとホワイトチョコでできた巨塔のように、俺の周囲を囲い込む。
見上げれば、m二人の股間が俺を見下ろし笑っていた。俺の空を覆いつくすように巨乳を膨らませ、ぶっとい美脚をさらに膨らませていくのだ。
反対に俺は、地べたへめり込み、這いつくばり、二人の下面を見上げる蟻になっていく気分。二人に踏まれる床、ただ圧倒されるだけの虫が俺だ。恐ろしくって俺は、スベスベの褐色生脚にすがりつく。
「お、置いていかないでくれ! いやだ、ペットになんかされたくない! お願いだから、いやだ、2人の股間にも届かない体なんて、やだ、嫌だ……!」
腕の中で、むくむくと太くなっていくむっちり太もも。俺の手からすり抜け頭上へと伸びていけば、下から丸っこい膝が現れ、さらに先へと進んでいく。2人の巨体で、床が撓んでいった。俺が小さい証拠だ。
そして巨大化が止まれば、巨乳に代わって今度は膝小僧が俺を見下ろす番だった。
「で~きたっ♪」
「……あれ、おもったよりお家、狭かったんだね」
スパッツの底とミニスカートの空洞が俺へ語りかける。もはや、全貌すら見渡せないほど、ワンコたちは巨大になってしまったのだ。人間の家に長身異種族がそびえたち、飼い主の四方で美脚の長さを誇っている。
俺は、ヘナヘナとケモ耳娘の足元に座り込んだ。
「わ~、ご主人ちっちゃ♪」
「サエト、ペットになっちゃった」
俺の気もしらず、そんなことを言ってのける2人。
「可愛がってあげるから、さ」
「元気、出して」
そして、屈辱的な慈愛を注がれたのだ。
これが、俺の小人堕ちまでの顛末。
でも、待っていたのはもっと惨めでエッチな、凌辱の日々。
それが、幸せか、不幸せか。
判断する理性を、2人は残してはくれなかった。
§
結局始まったのは、4倍ペットに囲まれ送る非日常の日常だった。
それは、屈辱。
なんでってもう、2人のおっぱいにさえ潰される体。
何をしたって抗えない。
ただひたすら、元飼い主は巨大わんこに生かされる他なかった。
全部が全部、2匹の思うがまま。
もう、服さえ着せてもらえない始末なのだ。
「服なんかいらないでしょ?」
あっけらかんと2人は言って、僕を裸のまま足元に転がすばかり。
取り付く島もない。
しばらくは、抗えもせず過ごしていた。
なるほど犬耳少女の旺盛な代謝で、部屋はぽかぽか、暑いほどで風邪こそひかないものの。
「……やっぱりダメだって!」
俺は、呻くように叫ぶ。
当たり前だった。ばるんばるんとおっぱいを揺らす美少女2人に囲まれて、反応しないはずがない。価値観の違う異種族2匹は気にしなくても、耐えられっこなかった。
「服、くれって! 恥ずかしいんだよ……」
褐色生脚に抗議する。
「だって服ないもん」
「力でどうにでもなるだろ!?」
ピーピー叫んで、俺は巨大ペットに怒鳴り散らした。
でも、それがいけなかったらしい。
「そんなこと言うと……、おしおきしちゃうぞ~!」
くるりんっと指を回す。
そうすれば縮みだす俺の体。身の丈5㎝にまで堕とされ、はるかに巨大な褐色素足の前に立ち尽くすのだ。
「ご主人、ち~っちゃ♪ もう僕が怪獣に見えるんじゃない? えへへっ、食べちゃうぞ~♪」
“がお~”といって、突如巨大美少女怪獣は俺を追い出したのだ。
「ヒッ!?」
「がるる~♪ ふふっ、踏んじゃうぞ~?」
“ズダンッ!”と足を踏み出し屈みこめば、思わず俺はパニック状態。逃げだせば、それがなお巨大ペットを喜ばせた。
バカもバカ、大バカだった。
犬に背を向け逃げ惑うなど、襲ってくれというようなもの。
「あははっ♪ サエトも遊んで欲しいんだね♪」
踏み出す足で轟音を響かせ、褐色素足の爆撃を始めたのだ。
「やめ、やめてくれえ!」
「やだねっ♪ ほらほら、逃げないと僕の足のシミになっちゃうぞ~?」
家の中を駆け出したって意味はない。俺にとっては迷宮でも、2人にとっては狭いただの賃貸だ。
部屋を巡り、こけそうになりつつ逃げまわって。
それでもなんとか、ベッドの下に隠れおおせた。
直後、モカがズシズシ地面を揺らし部屋に入ってくる。震えあがって俺は縮こまった。完全にネズミの気分だ。隙間から大きな褐色素足が行き来するのを見れば、いよいよその感覚はいや増した。
けれど、少なくとも今は一安心だ。
俺は安堵のため息をついた。
「……そこだね」
「えっ!?」
モカがピコッと耳を弾ませ、ベッド裏を覗き込む。その目は、正確に俺の方を向いていた。
「なっ、なんで……!?」
「あはっ、クー・シーは人間の何倍も耳がいいんだよ? どこにいたってご主人の場所なんかお見通しなんだから」
「そんな……」
褐色まぶたをぱちくりさせると、モカはクスクス笑った。そうすれば、今度俺に襲い掛かるのは大きな手だ。
「かわいいなぁご主人は♪ ニンゲンの弱さも知らないんだね? ふふっ、僕がゆっくり教えてあげるよ……♡」
それでもあがこうと、俺はベッドの下を抜け空き箱の中に隠れて……。
「見・つ・け・た♪」
俺は、箱ごと持ち上げられてしまうのだ。
蓋が開けば、空半分を埋めつくすのは小麦色の肌をしたとびきりの笑顔。
「んっふっふ♪」
そのままベッドに腰掛けると、モカはすっかりご機嫌だ。
箱の中を膝にあけ、俺を太ももの谷間に引きずり込む。ぴちっとしたスパッツ生地のV字谷は、まるで蟻地獄だ。一度はまれば、もう俺は逃げられない。
「た、食べないでよモカぁ……!」
びっくりするほど情けない声が出てしまう。震えを堪えつつ、宣告を待つ惨めさたるや。対するモカは体をベッドに倒し、鼻声混じりだ。
ゴロンと寝転がる褐色大陸。
それが、少しシャツをたくし上げると。
「お腹、ナデナデして~♪」
「……へ?」
先とは打って変わって、仔犬のようにそう言ったのだ。
遊びたい盛りの犬耳少女。逃げるプチ飼い主を捕まえて、巨体でじゃれつくのが目的だった。
「撫でてよご主人~」
「あ、ああ……」
肩透かしを食らった気分で、太ももの谷から逃げようともがく。そうすれば、張り詰めたスパッツは鉄板かと錯覚する張力を誇示し、俺の心を挫くのだ。
「モカ、手伝ってくれ……」
「ん? もしかして、出られないの?」
「……ああ」
「あははっ、ご主人ったら弱いんだから♪」
指先大蛇に引っ張られ、ミチィ……っと蟻地獄から引き上げられる。下ろされた先は、スベスベの褐色平原。
思わず滑りそうな曲面に必死でへばりつき、俺は力なくおっぱい山の方角を見た。そこには、うずうずした素朴な笑顔。裏切れるはずもなかった。
「……」
見渡すのは、暖かく、キュッと締まった栗色の丘陵だ。全身ティラミス肌のモカのお腹は、途方に暮れるほど広大だった。きれいだった。いい香りがした。
でもこんな体にされて、こんな小さな体で、満足させられるのか?
ただ居るだけで思い知らされる自分の小ささ。おっぱいの丸み二つに見下ろされて、褐色娘のへそピアスにされたみたいだ。泣きたくなるのを堪えて俺は、ペットのお腹にご奉仕を始めた。乗っかるのがためらわれるほどのお腹に跪き、サッと一撫でしてみれば——
「……ッ!」
あまりの手触りに、ゾゾゾッと快感が迸るのだ。きめ細やかな肌はマシュマロのように滑らかで、且つ柔らかかった。その奥からは、世界を支えるお腹の締まり加減が伝わってきて、静かに上下する度に力強さを思い知らされる。素肌のベージュは、ぽかぽかとお日様の香りがする柔らかさ。みずみずしさと暖かさで手に吸い付いてきて、とてつもなく気持ちいい。
「なんだこれ、すごい、クセになる……!」
一撫でだけで、若い肌の潤いが手のひらに浸透した。異種族特有の、南洋の花みたいな甘い香りが肺の奥まで入り込む。極上のベッドにも勝るこの質感が、延々と続くのだ。狂おしいほどの多幸感だった。
「ご主人の手豆粒みたい。全然感じないよ~?」
「って言っても……」
「全身使ってよ。逆らうなら食べちゃうよ?」
「は、はい……!」
女神さま……! 願ってもない命令に、俺は全身で褐色ぽんぽんに飛び込んだ。ほおずりしたくなる広大な肉ベッドに、思う存分触れていいのだ。耳を寄せれば、ゴウゴウという血流の音と、キュルキュルと内臓の鳴る音が聞こえてくる。それさえ愛しくてたまらなかった。
俺はすっかり、ケモ耳美少女にくっつくノミにされてしまっていた。その愛慕を表そうと大仰なほど腕を振って、やっと飼い犬女神は俺を感じてくれたらしい。フフッと小刻みに揺れて、小豆を翻弄する。
「ご主人かわい~♪ 僕のへそのゴマみたいだね♪」
「やめてくれ! ……で、でも、もっと触っていいか?」
「えへへっ、撫でて撫でて~♪ でもその前に……」
トントン、とおへその辺りを指先で叩くと。
「舐めて?」
「え……?」
「舐めてよ。ご挨拶するんだ。……命令だよ? ペットのおへそを舐めまわして、自分の何倍もあるお腹を隅々まで撫でるの。それとも、僕のおやつになりたい?」
同時に、グルルル……っと大きく鳴るのは腹ペコ犬っ娘の胃袋だ。肌を震わすほどの大音量が地面から鳴り響き、長く、長く俺が欲しいと訴える。
「わかった、わかったから食べないでくれ!」
即座にヘソへ這い出すと、巨乳山脈の向こうから飼い犬に笑われた。必死なのは当然のこと。だって早くしないと、この広大な大地のすぐ下、凶暴な地下洞窟に閉じ込められてしまう。それは甘美な地獄となって、俺をぐちゃぐちゃに消化してしまうだろう。そんな猛獣をなだめるためにも、俺はその表面にご奉仕しなければならなかった。
「よしよし、良い子だね♪」
スッと走るミゾのもとにたどり着き、裸の俺はそのくぼみに這いつくばる。妖精のおへそだ、隅々まで磨いたみたいに綺麗で、だけれど同時に、どこか淫靡な雰囲気を漂わせていた。縦にキュッと締まって、なんだかそれは……。
「早くしてよご主人~」
「ま、待ってくれ!」
慌てて縦ミゾに手をかける。そして少し開くと、そこには愛らしくすぼまる穴が一つ。
「……」
恐る恐る顔を近づける。
意を決して顔を沈み込ませ。
舌を出せば。
「……くふふっ、くすぐった~い♪」
より濃く香る甘い洞窟、その無垢な襞に舌を這わせたのだ。背徳的な行為に、ジンジンと股間が痺れた。一層強く聞こえる心臓の音、内臓の音。褐色の大地に潜り込み、俺は本当にへそピアスになってしまったらしい。
みっともなく自分のへそを舐めるご主人を、犬っ娘はどんな風にみているだろう。自分の指より小さな俺、おやつにもならない異種族のオスを真っ裸にし、奉仕させて、どれほど惨めに見えたことか。きっと、愛しく、哀れに思ったことだろう。ささやかな興奮に、ムッと肌を火照らせながら。
俺は、へそのフチへ、ティラミス色の肌へ舌を走らせた。俄かに大地は熱くなり、まるで常夏の島、そのエッチなお腹にひたすら張り付き奉仕させられたのだ。舌全体に感じる、繊細な肌のキメ、熱くて甘くて柔いお腹の肉感。ペットのお腹なんかが、こんなにエロく感じるなんて。もう、胸もペニスも苦しくてしかたない。
「僕のお腹、そんなに気持ちいいの?」
「だって……」
「ご主人のヘンタイ」
「ごめん……」
「ヘンタイヘンタイ!」
「許してって!」
「ふふっ、もうすっかり小人が板についたね? なら、特別にご褒美あげようか……」
そうつぶやくと、褐色娘はシャツを更にたくし上げ——
「えい……♪」
“ブルンッ!”と、片乳をこぼれさせたのだ。
「お、おい!?」
「ふふっ、おちんちんビクってなった♪」
「……っ!」
思わず股間を隠す。反応してしまった。いや、反応しただけで済んだのだ。暴発しなかっただけ、むしろよく耐えたというもの。
実際、それほどまでにモカの巨大おっぱいはエロかった。
ただでさえ爆乳だった褐色娘の乳房、それは今やガスタンクさえブラ代わりにもならない巨球と化して、俺の前にどゆんっとそびえたつ。
乳首だけで俺より重いんじゃないか。乳輪なんて絶対俺じゃ隠せもしない。谷間だけでも数メートルはあって、片乳全体なんて10トンは軽く超える重さだろう。
そんなまん丸おっぱいに触れるなんて!
「……いいんだな?」
「ご主人に媚びるのも、ペットの役目だよ?」
「……」
けれど、そんな言葉にも従順に反応してしまう俺の愚息。乳房の影で見えてはいないだろうが、飼い主の敗北をモカは気付いているはずだった。
逡巡と期待で板挟みのまま、俺はあったか大地で足を踏み出す。一歩ごとにでっかくなっていくチョコ色富士山に、もう股間は痛いほどだ。
そして、乳の谷間にたどり着くや否や。
俺は耐えきれず、全身でおっぱいの傾斜に張り付いた。
そんなことして、どんな感触に襲われたか。