共犯トロイメライ
🕑 Added 2019-08-30 10:30:59 +0000 UTC
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一つだけ。
一つだけ僥倖だったのは、発作時にみらいさんがいたことだった。
不幸続きの日々の中で、それは何よりの光であり、災いを補ってあまりある幸福とさえ言えただろう。
少なくとも、結果的には。
原因は何かわからない。
出勤のため玄関を出た拍子だった。
ぐらりと歪む垂直線に押し倒され、失神し、僕は縮んだ。
献身的な彼女のことだ。縮小病の急性発症の僕を、放っておくはずもなかった。
縮み行く体を抱き、発作が収まるまで付き添っていてくれたらしい。
昏倒したまま、縮む僕。
それを、病院へ連れていったのだという。
身寄りのない僕に代わって、医師の説明さえ聞いてくれたという。
が、症状からして診断などするまでもない。出来ることもろくにない。申し訳程度の点滴を受け、薬だけもらい、さっさと返されてしまった。
熱中症程度の扱い。そんなものだ。経過観察以外にすることなどない。なにより、社会的死を意味する縮小病の罹患者に、手を尽くす義理などなかった。
意識を取り戻したとき、そこにはみらいさんがいた。
「あぁ良かった、もう目を覚まさないかと……」
まず目に映る、ウェーブがかった亜麻色の髪。そして、美しい顔に浮かべた、ほっとしたような困ったような表情。悩ましく寄せた眉を覚えている。
「ヒッ!?」
子供用の白衣さえダボダボ、およそ半分に縮んだ僕は、まず彼女の巨大さに打ちのめされた。
2メートルの人間でさえ威圧感は相当なもの、況して3メートルに迫る彼女の存在に、思わずおびえてしまったのは無理もないことではあった。しかし、女性相手に、しかも恩人に取ったこの態度を、僕は後々まで悔やむことになる。
「大丈夫です、落ち着いてください。私です。隣の部屋の……」
そっと手を重ねてくれた、ほっそり柔らかな手に僕は落ち着きを取り戻す。それから自分の身に降りかかったことを悟るまで、そう時間はかからなかった。
「ぁ、え、みらいさん……? どうしてそんなに大きく、いや、まさか……」
ひどく動揺する僕を、どうして彼女は慰めてくれるのだろう。親しくはあったが、特別な間柄ではまだない。近しい隣人程度。料理をおすそ分けしたり、お土産を渡したり。そんな曖昧な距離が縮まったようで、どん底の気持ちに一筋の光が見えた気がした。
……彼女は、僕のあこがれだった。年下だろう彼女が、大人びたそぶりでふんわりと緩く笑う、その笑顔が好きだ。お姉さん然としたこの美少女に、お近づきになろうと思っていたのは確か。そして、距離の近いスキンシップに心を弾ませ、真意を測りかねたまま、ここまで来てしまっていた。
急激な縮小に耐えきれず死ぬこともある。とはいえ、隣人程度の男が大事に至らなかったことを喜ぶ彼女は、僕にはどうにも不思議だった。
実際のところ、彼女の喜んだのは僕の無事ではなかったのだが。
膨らむ喜にと不可思議。かてて加えて、不安だからと家に招き、今後のことまで一緒に考えてくれたなら。
どうしても僕は訊かずにはいられなかった。
「なんでこんなに良くしてくれるんですか? 僕はただの隣人なのに……」
「ご迷惑でしたか?」
「そんなことは! ……それなりにお話はしてきましたけど、それだけなので」
「あー! そういうこと言っちゃいます?」
柔和に笑う少女。ややたれ目な目尻の泣きぼくろが、表情を更に柔らかくする。何度もドキッとさせられた笑みだ。
それから目を伏せて。
「私がそうしたい、じゃ、ダメですか……?」
わずかに笑みを浮かべながら、彼女は恥ずかし気にそう言った。
その言葉に、なぜ抗う必要があろう。
§
それから、彼女との時間は日に日に増していった。
食事を、洗濯を、買い物を……。容易に外出出来ない僕の代わりに、薬まで取りにいってもらう日々。申し訳なく思いつつも嬉しくて、ついつい彼女の介助に浮かれてしまう。
実際、彼女ほどの女性なら、その存在だけで男を癒すに十分だった。
だって、その緩い雰囲気だけでも心が安らぐのだ。
ほろほろと流れる、深い紅茶色の髪。肩もとまで伸びるわずかなウェーブのセミロング。もみあげを少し長く垂らした大人っぽさに合わせ、一房結った可愛いサイドテールがにくい。聡明な女性だった。
ニットのセーターに長い白スカート。ストッキングを履いていることが多く、スカートの裾から覗く無光沢な黒が、心を惹いてやまなかった。指、脛の稜線や膝、ふくらはぎのふくらみによってほんのり透ける肌が、彼女の姿をセクシーにする。
こと、彼女に関して僕は賛辞を惜しまない。あるいは、野暮な男に尽くせる賛辞などないのかもしれない。一度、ゴールデンレトリバーに似てますねと言ってひどく怒られたことがある。けれど、憂いさえ孕む落ち着きに愛嬌が同居する、そんな彼女に一体どんな言葉をあてればいいのか。
「どうされたんですか?」
長いまつ毛が落とす影の奥では、アクアマリン色の瞳がこちらを覗く。これでも、年下のはずなのだ。女性の奥深さにはかなわない。
「僕は幸せ者だなって」
みらいさんはキョトンとして、伏し目がちの大きな目を瞬かせる。そして、柔らかく唇に弧を作った。
「病気になってそれが言えるなんて、ナオさんはえらいですね」
撫でてあげます、と言ってからかうように僕の頭に手を置く。当惑してしまうのも無理からぬこと。これまで独立独歩で生きてきた僕に、頭を撫でられるなど絶えてなかったことだ。
それだけでない。頭を丸ごと包む大きな手は、僕に別種の感覚を与えてくれた。
なんてあたたかく繊細な手。人に触れてもらうことが、こんなに心地いいとは。はじめ、目を覚ました僕の手を握ってくれた手のひらだ。飛び切りの美少女、それも思いを寄せる人と触れ合う感情。それは安心と呼んでいい、暖かく胸をくすぐるものだった。
「小さくなって、髪もサラサラになりましたね。なんだか可愛いです♪」
「やめてください、これでも大人の男なんです……」
「良いんですよ、縮小病は生きるだけでも大変なんです。せいぜい、私に存分に可愛がられることですよ?」
「ははは……」
もちろん、複雑な気持ちがないわけではなかった。
彼女の好意に甘えてばかりとはいかない。いつか自力で生きていかなければならないのだ。比較的独立心の強い僕にとって、現況はむしろ特例だった。
動かなければならない。立ち止まっている場合ではなかった。
§
徐々に彼女との距離が近くなる。はじめ、大きな自分の存在で僕を驚かさぬようにしていた少女が、僕に近づき、寄り添い、心の機微に触れようとする。
……願わくば、彼女の想いを期待する僕を許してほしい。僕は、ずっと彼女を愛慕してやまなかったのだから。
床を踏み僕のそばに足を下ろす、重い振動さえ愛しかった。スカートの裾から覗く、その膝に触れたいと強く願った。僕の左右を大きく阻むすらりとした美脚、腕を伸ばしたところには腰があり、さらに遠くで下乳が、さらに上空では彼女の美貌が僕を見下ろす。どこまでも続くような部屋の主、巨大な世界で僕を支える存在に、胸の高鳴りを抑えきれなかった。
自然と、僕の世話は彼女が行うこととなった。
五体満足でありながら生活者として致命的に欠陥を抱える僕じゃ、凡そ家事を担うなど到底能うことではない。椅子にさえ容易に座れないのだ。
「手間ではないので気にしないでください。私の家事の次いで程度ですから」
「でも……」
この抵抗感は、そう理解できないものではないだろう。
まだ三十路も遠いというのに、老人のごとく介護される日々。思慕する女性だからこそ、強く覚える反発かもしれなかった。だって、格好いいところを見せたいじゃないか。
食事に加え、掃除洗濯皿洗い。トイレと風呂だけは何とか死守したものの、その他全ては彼女に頼り切りだ。
そんなこと、到底僕の肯んじうるところではない。贅沢な話だった。意中の女性に世話をしてもらえるというのに、どこかそれが不満でもあったのだ。
だから言ったのだ。言わなければ良かった。それなら、知らずに済んだことに。
「あの……こんなにお気遣いなさらなくても大丈夫ですよ? 僕も、ゆくゆくは自立したいですし……」
その時彼女の瞳に混ざった、悲しげな色はよく覚えている。
「……厚意を無下にするようで申し訳ないですが、僕だって」
「……なんです」
「はい?」
それから、一つ息を吸うと。
みらいさんは、意を決したように切り出した。
「無理なんです。もう、ナオさんは一人では暮らせません」
「……どういうことです?」
それはおかしな話だった。みらいさんの助けがあれば、なるほど、よりスムーズに暮らすことは出来る。けれど少なくとも今、僕はこうして一人で寝起きし、大量の食事を小分けにして食べている。生きていくこと自体は可能なのだ。
しかし、彼女が言っていたのは生活能力のことではなかった。
「言いにくいことなんですが……」
差し出されたのは不動産の書類だった。
曰く、立ち退け、と。
至極当然のことだった。
衰微はしても恢復の見込めない縮小病者、じき零落する小人、そんな人間が、不動産の審査基準を満たせるはずがない。そもそも、既に広い空間を持て余していたのだ。社会的身分も、身体能力も不安定な人間。休職はいつまでも続けられない。カードも止められるだろう。そして、そして……、そのあとは?
とどのつまり、僕に自活など不可能なのだ。
どう衝撃を処理すればいいのか。人前で感情を爆発させるほど愚かではなかったが、隠し通すほど聡くもなかった。
飲み切れず言葉を失う僕をただ辛抱強く待ってくれる聡明な少女。
「……これは、僕の問題です」
「そうです。でも、私が単なるお節介でここにいるとお思いですか?」
ああ、彼女は真にお節介な娘だった。
「私にも、覚悟があるんです」
続いて細い指先が滑らせたのは、後見人の書類。
その隣にある赤い紙は、二人の紐帯を約束する……。
「受け取って、くれますね?」
彼女がはにかむように言う。
少し考えさせてくれと、それだけが能う限りの強がりだった。
§
淡々と時は過ぎる。
いつまでも自失してはいられない。
「狭い部屋ですけど、お気兼ねなく、ね?」
僕が訪れたのは、幾度か通された部屋。
それが今、2倍の高さ、4倍の広さ、8倍の空間を伴って広がっていた。
狭い、ね。
他意のない彼女の言葉を独りごち、僕は少女の生活圏に踏み入った。
鼻腔をくすぐるみらいさんの香りに、どこかそわそわと足を浮かせながら。
§
「縮みましたね。……マイナス10㎝、ですか。これで80㎝、元の半分を割ったみたいです」
メジャーを巻きながら、みらいさんは呟いた。
膝立ちになった彼女の胸の下。
ぶかぶかになった服をまとった、僕が呆然と立っていた。
これまでなんとか着ていた子供服、それすらもう合わなくなっていたのだ。
「でも、もう服なんてないですし……」
困ったようにみらいさんは言った。ゴソゴソとタンスの中を探り、お尻を振っている。
……突き出されたお尻で、スカートがパンパンだ。どっしりおっきなお尻が僕の前を右へ左へ。布は巨尻で張り詰めて、パンティラインがくっきり見えてしまっている。
それだけじゃない。出てきたときには彼女はすっかりみらいさんは汗ばんでいた。暑くなったのか、セーターを脱いでシャツ姿だ。それすら汗でほんのり透けて、黒のブラジャーが肌との境界線を浮き上がらせる始末だった。
「参りましたね。いっそのこと、大きな布をワンピースみたいに着てもらうしか……」
みらいさんは、少し視線を宙に漂わせる。あれこれ勘案し、何がいいか迷っているようだった。
ぐるりと周囲を見まわし。あれでもない、これでもないと視線をさまよわせ。
最後に、自分のシャツに目をとめた。
それから、やおら脱ぎだしたのだ。
「ちょっと、みらいさん!?」
「これ、どうですか?」
こともなげに、娘は自身のシャツを差し出した。もちろん、彼女は上裸。どういうつもりかと僕が目を白黒させる間にも、少女は膝をついて僕に脱ぎたての服を着せようとしていた。突然のことに心が追いつかない。
「ダメです! みらいさんの服なんて……。なにより、大きすぎです!」
「大きくて良いんです。下手に小さいとズボンがほしくなりますから。あとは……」
「あとは?」
「私の趣味です♪」
瞬間、猛然と暴れ始めた僕をみらいさんは笑って取り押さえた。そのまま袖を通させようとし、そのたびブラの中で乳房が揺れる。
「まあそれは冗談として、……冗談でもないですが、後はタオルを巻くくらいしかないんです。それだと生地が厚すぎますし、薄布だとはだけた時肌を守れません。……慣れない暮らしで、ナオさんケガをしがちですから」
断言する少女。そういわれてしまうと、僕にはもう反論の余地がなかった。
大きな姿は、それだけで相手を上位に見せる。かつて上級生が大人に見えたように、大人が成熟して見えたように。それが幻想なことは往々にしてあること。しかし同時に、抗いがたい力を持っていることも本当のことだった。
笑いたくば笑え。僕はだんだん、どちらが年上かも解らなくなってきていたのだ。
「もう合う服がないんです。これから縮むのは確実ですし、今はこれしかありません。……スカーフやハンカチが似合うサイズになれば、話は別ですけど」
おかしいとは思った。だって現に、みらいさんの服はダボダボなのだ。
だが、代わりにどうしろとも言えない。そのうえ、彼女の言葉にはどこか判決めいた響きがあった。
……これまでの日々で気付いたのだ。やんわりとしたその口調が、同時に有無言わさぬ力を持つと。彼女と同じ様相。柔らかそうで、だのにそれが確かな存在感を生んでいる。力をもってすれば、意地っ張りな僕は反発したろう。それを知らず知らずここまで押し流したのは、春風のように柔い弾力だった。心地よい、まどろみのような息吹……。
共犯だ。僕は、それを進んで受け入れている。
こっそり、まとった布に鼻を寄せる。未だ彼女の空気を孕んだ、百合のような香り。最初に抜ける林檎のような爽やかさを、お菓子に似た甘さが追う。
意識すればなお、肌触りが細やかに現れる。さっぱりとした肩やお腹に比べ、背筋はなおやかで、胸はさらにしっとりと、腋にはささやかだが確かな湿気。第一、胸はまだ乳房の形を覚えているのだ。僕の肩からお腹まで弧を描くその曲線が、バストの大きさを物語る。紛れもなく、これは彼女の着衣。ぬくもりは生々しく、みらいさんの内側にいるような錯覚さえ覚える。体が本能的に求める、安心と官能の羽衣だった。
「かわいいですよ、ナオさん♪」
「やめてくださいよ、ただでさえ恥ずかしいんですから」
「ほんとうに、それだけですか?」
”え?”と、聞くことも出来なかった。
その瞬間、みらいさんがどこかねちっこい笑みを浮かべていたからだ。
驚かされる。ひきずるように自身のシャツをまとう小男、わずかに自分の形を残した服にすっぽり包まれて、改めて実感する体格差と自分の大きさ。何より、僕の非力さを前に特殊な感慨を覚えた女の表情。あの聖女にさえ見えた少女が今、僕を見て妖艶な笑みを浮かべている。
瞠目する他なかった。
「みらいさん……?」
「ふふっ、とぼけたフリしたって無駄ですよ? 下、丸見えです♪」
いつから醜態をさらしていたのか。反射的に股間を隠す僕に、みらいさんは艶やかな微笑みを浮かべる。
「ナオさん、私の匂いで興奮しちゃうんですか? シャツの匂いを嗅いで、エッチな気分になっちゃうんですか? 私の脱ぎたてシャツの着心地、気持ち良かったんですか?」
少女はクスクスと笑って、イジワルな質問をする。ベッドに腰を降ろして脚を組めば、まるで尋問官。僕の粗相により、何かのスイッチが入ってしまったらしかった。どこまでも純粋で、優しくて……。そんな少女の奥底から僕を覗いていたのは、僕の知る彼女とは別種のまなざしだった。けれど、それが何か、今の僕にはわからない。
だから、なおのことそれをくすぐってしまうのだ。
「あはっ♪ ナオさん、ストッキングも好きなんですね♡」
凝視してしまったのは、スカートから伸びるセクシーな下着。黒のストッキングにマットな反射をはべらせ、肌の色と溶け合いチョコレート色の光沢を走らせる。それは、みらいさんの美脚を模した、繊維の塊のようにさえ見えた。太さのせいでパンパンに引き延ばされた、グラマラスな太ももや裏もものせいか。その中に素肌が隠されていると思い出させられる。
「いけないんですよ~? 女の子の体をエッチな目で見ちゃ。ふふっ、でもちっちゃいナオさんなら、エッチな目で見られることが多いかもしれませんね♡ 女の子は自分より弱い存在がいると、否応なく興奮してしまいますから♪」
ススス……と足先で僕の顎をなぞるみらいさん。
ストッキング特有の水を弾くような感触が、みらいさんの足指の形を取って僕を撫でる。喉仏をくすぐり、顎をなぞり、頬をよしよしと撫でて……。僕の顔など、つま先だけで踏みつぶせるおみ足。それがふわっと芳香を漂わせ、小男を愛撫した。
視線の先には、こちらに向けて大きく開いたスカートと、タイツにうっすら浮かぶ少女のショーツ。釘付けになる僕を、優越感に富んだ視線が仰角45度の高みから見下ろしている。
「みらいさん、……見えてます、下着」
小男の言葉にも、彼女は超然とした態度を崩さなかった。”そうですか?”と口にして、クスリと笑みを漏らすだけ。
「僕だって、男なんですよ?」
「ふふっ、私だって女なんです♪」
「この、このひとは……ッ!」
おっとりした少女の挑発に、思わず僕は乗せられてしまう。
衝動的にその美脚にしがみつき、押し倒そうとした。女性の体に暴力を振るう、あってはない行為。しかし、性的な衝動と共に飛び出した体は、止められなかった。
元の僕なら、どうなっていただろう。かつての彼女は、自分の肩に届く程度の小さな女性だ。女性としては長身でも、僕より何十キロも軽く、手も足も小さくて、片腕で持ち上げられるような、華奢な少女だ。こんな力を振るえば、跳ね飛ばされたに違いなかった。死んでしまうこともありえたろう。強引にベッドに押し倒し、服を破り、見たこともないような顔と声で泣き叫ぶみらいさんを、そのまま……。
それが、どうだろう。
僕は少しタイツを引き延ばしたあと、微動だにしない脚相手にもみ合いを続けていた。これじゃ独り相撲もいいところ。いたずらっぽく笑うみらいさんは、カーテシーのようにスカートを上げて僕の醜態を見た後、ストンと手を離し僕を服の中に隠してしまう始末だった。
そうだ。もう僕たちは、かつての男女の体格差ではない。僕を撫でたこの片足でさえ、僕より重かった。片脚だけで400キロ、況して全体重は何トンあるかもわからない。そんな少女相手に、何が出来るっていうんだろう。僕は今、2キロもないというのに。
「遠慮しなくてもいいんですよ? ナオさんに傷つけられるほどヤワな女じゃありませんもの♪」
弾んだ声で僕を笑う。
そして、軽く脚を揺らせば。
必死に捕まっていた僕は、一気に振り倒されてしまった。
「もうおしまいですか? じゃあ、ちょっと反撃しちゃいますね♪」
起き上がろうとする僕を、ストッキングの足裏が射止める。薄膜越しに見える素足がセクシーで、思わず見惚れてしまったのだ。そのままエッチな足先に押し倒されれば、もう、僕は逃げられない。